出会いはなんだっけ。あれ、やばい忘れかけてる。

「お前の友だちが研磨に絡んだからだっただろ」

『あ、そうだっけ。よく覚えてんね』

「普通だろ、普通」

そうだ、出会いは大学だった。
あたしの連れが可愛い子発見した、食いてーとか言って研磨くんに絡んで、てつが助けに来たのだ。
その連れが、ついでだからてつもあたしも一緒に飲もうと居酒屋に繰り出して、四人で飲むことになったのが初対面のこと。

『友だち、いいの?あれ絶対やられるよ』

「ま、大丈夫でしょ。あいつもいつまでも童貞ってのもね」

てつはそのころ猫を被っていた。
誰にでも見せる顔であたしを部屋まで送ってくれたので、とりあえず上げてみたら普通にそういうことに。
ソファでキスしながら押し倒してきたてつを、まあいいかと受け入れたのが始まりだ。
そっからセフレ的な関係を続け、てつの化けの皮が剥がれ、なんとなく言葉もなく付き合っている。
ま、お互い好きなら一緒にいればよくね?って感じ。
今までいきてきて一度もしたことのない料理や洗濯なんかも、てつのためならできる。
たぶん、てつに怒られたりふられたり、浮気されたりしたらあたしは凹んで泣きわめいて死んだりするかもしれない。
なんでここまで好きになったのかはわからないけど。
てつの膝の間に座って映画を見ながら、ちらりと振り返って見た。

「ん?」

『ん?』

「何だよ」

『べつにー』

そのままてつに抱きついてみる。
あー好きだなー。大好きだよ。
そうやって心の中ではいえるのに、あたしは好きと口にできない。
てつが好きだと言ってくれるたび、あたしも言いたいけど、言えない。
怖いから。
あたしはビビリで、しかも恥ずかしがりで、どうしようもない奴だから、いざ好きだと口にしたら、嫌われそうで怖いのだ。
だから言えない。
だけど、てつはちゃんとわかってくれる。
言わなくてもちゃんと、全部わかってくれる。

『てつ、今日オムライス作ってあげる』

「たまねぎみじん切りにできるようになったのか?」

『できるし』

「じゃ、楽しみにしとく」

『ん』

今日こそ一人でオムライスを作って、ケチャップで書いてやるのだ。
口では言えない言葉を、ケチャップに代わりに言ってもらうのだ。
たまねぎをみじん切りにしたら目が痛くなって涙が出るので、家の中なのにサングラスをしてキッチンに立つ。
やってやる!
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