『相澤くん見て見てー』

自習の授業中、みんなが遊んでいる中一人大人しく椅子に座って居眠りをしている、隣の席の相澤くん。
肩を叩いて起こすと、不機嫌そうに睨まれた。

「…何だよ」
『じゃーん』
「…………」

眠りを邪魔すんなと言いたげな顔の相澤くんに、自分の全身を見せつけるように両手と両足を開いて見せた。
わたしは相澤くんのすぐ横に立っているので、バッチリ見えているはずだ。

『イレイザーヘッド2!』

ぽかんと口を開けてわたしを見つめる相澤くんに、わたしは達成感を覚えた。
実はさっき、普通科の友達(髪の毛から服を作る個性)に、相澤くんのヒーローコスチュームと同じ服をわたしサイズで作ってもらったのだ。
目的はいつも冷静な相澤くんをびっくりさせるため。
なので、自習になった瞬間にトイレに行って着替え、真っ黒なつなぎに身を包んだわたしは、灰色の細切れの長〜い布をぐるぐると首から肩にかけて巻きつけ、昨日買った黄色のゴーグル(花粉症用のやつ)をバッチリ装着し、マイク(山田)のワックスを借りて前髪を全部後ろに撫でつけ、なんちゃってオールバックにし、相澤くんに見せつけてやったのだ。
そう、今わたしはイレイザーヘッド2。
ちょっとサイズの小さくなったイレイザーヘッドである!

『わたし人の個性を消すよ。この布使って肉弾戦もできるよ』
「ちっちゃいイレイザーヘッドだ!」
「ミニイレイザーヘッド!!」
「イレイザーヘッドが二人いるぞ!!」

マイクを始めとしたクラスメイトがノッてきたので、サービス精神旺盛なわたしは、くるりと回転して群れるクラスメイトに決めポーズをしてやった。
首に巻いた捕縛武器もどきの布の端を掴み、ヌンチャク的な気分でぐるぐる回す。

『個性消すぞー!かかってこーい!』
「おまえ個性消せねーだろ!!」
「肉弾戦も弱いだろ!!」
「おい、後ろに本物いるぞ!!」

後ろ、と言われたので振り返ると、いつの間に立ち上がったのか相澤くんが、わたしの背後に立って怖い顔でわたしをじっと見下ろしていた。
ゴゴゴ…と音がしそうなくらい凄まれている。
思わず「ひっ」と短く悲鳴を上げると、右手をパーの形にした相澤くんは、一思いにわたしの頭を引っ叩いた。

『いたあっ!!』
「脱げ」
『えっ?』
「今すぐ脱げ」
『相澤くんのエッチ!いたい!』
「まだしばかれてえのか」

頭に二発目をくらい、さすがに痛いので反省して、とりあえずゴーグルを外した。
見上げると、まだ怖い顔をしている相澤くんと目が合う。

『怒った?』
「馬鹿にしてんのかおまえは」
『してないよ!わたしはただ、ペアルックして相澤くんをびっくりさせようと思っただけで!悪気はないんだよ!お揃いの服着てみたかっただけなの!』
「……なら許す」
『ありがとう!』

「「「(許すんだ…)」」」

クラスメイトが若干引いたような顔で見つめてくるが、気にせずゴーグルを再び装着した。

『今日のヒーロー基礎学、わたしこれでやるよ!ペアになったらお揃いで頑張ろう!』
「ペアにならなかったらどうすんだよ」
『大丈夫。心はいつも一緒だから!』
「…そうだな」

「「「(そうなの…!?)」」」

実は先月から相澤くんと付き合い始めたのだが、そういえばクラスメイトに言ってなかったことを思い出した。
勝手に気づくだろと思ってたけど、あいつら全然気付かない。馬鹿なのかもしれない。

『今日相澤くんち行ってもいい?一緒に宿題やろ!』
「ああ、来いよ」
『でも今日はこないだみたいに変なことはしないからね』
「…それは約束しかねる」

「「「(こないだは変なことしたのかよ)」」」

相澤くんが椅子に座ったので、わたしは制服に着替えるため更衣室に向かった。
教室で相澤くんがみんなに「変なこと」について質問攻めされているとも知らず。(相澤くんはシカトして寝てた)
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