「え、亜久津?こわい」

千石に亜久津をどう思ってるか聞かれてそう答えた。
千石は微妙そうな顔をしてどっかに行った。
意味わからん。あたし亜久津と喋ったことはない。
あ、一回だけあるか。
亜久津がお尻のポケットから財布を落とした時。
拾ってあげたんだ。そしたら無愛想にお礼も言わず去って行ったからなにあいつ。って思ってた。




「おい」

「な、なに...?」

なぜか亜久津に絡まれてる。なう。
笑えない。
あたしはお昼を食べに屋上に来ただけだ。友達がいなくて1人なんじゃない。
友達が休みだから1人なんだ。
教室で1人はちょっとさみしいから屋上まではるばるやってきたら、亜久津がいた。
座ってお弁当を広げてたら絡まれた。
凄まれてる。なう。笑えん。

「お前、俺が怖ぇのか」

「え...まあ、ちょっぴり」

「...そうかよ」

ちっ!と派手に舌打ちをして亜久津はあたしの隣に座った。
え!?なんで。
なんで隣に座るの。あたしお金持ってない。
下手に行動すると殴られるかもしれないな。

「...食わねぇのか」

「えっ」

「飯。食うならさっさと食え」

「あ、うん...」

怖すぎて身動きとれなくて、お弁当食べなかったら怒られた。
怖ええぇ!
仕方なくお弁当を口に運ぶ。さっきから亜久津の視線が痛い。
あたしを見て楽しいんだろうか。
もしやいつ殺すか考えてるのか。

「...煙草」

「ん?」

「...」

「ああ、吸っていいよ」

あたしがお弁当を食べ終えるまでじっと見ていた亜久津は、あたしに何か危害を加えるとかそういう目的じゃないっぽい。
何故か舌打ちながらあたしに許可を取った上で煙草を吸いはじめたから意外と優しいやつなのかも…いやいやそんな訳あるかい。優しいヤツは突然舌打ちしたり未成年でタバコ吸ったりしない、危ないいろいろ麻痺しかけてる。
しかしだいぶ亜久津といるのにも慣れてきた。ぽかぽかとお日様が気持ちいいなー。

「あ、ねぇ」

「...あ?」

「なんか千石があたしに亜久津どう思うって聞いてきたんだけど」

「あ?」

「知らないならいいんだけどね」

亜久津はさっきから、あ?しか口にしない。
その顔はかなり怖い。
煙草を地面にすり付けて消してから、亜久津はあくびをした。

「俺が聞けっつったんだよ」

「え?なんで?」

「...あ?」

困った時はとりあえず、あ?らしい。
こわいこわい。
機嫌を損ねたのだろうか。無残にも短くなって捨てられた吸い殻に目をやる。

「おい」

「んー?」

「こっち向け」

「え…。!?」

従順に従って、亜久津を見たら唇を奪われた。
近くに亜久津の顔がある。
え、え、え。
ちゅうだ。ちゅうをされている。
いきなりで驚いているあたしをよそに、亜久津はあたしの顎を掴んでキスを深くする。
舌まで入ってきた。くるしい。

「っんん...!?ん...っ!?」

「...こういうことだ」

「はあ、は!?」

顔を離した亜久津は怒ったような表情の顔を赤くしていた。
こういうことってどういうこと。
全く意味がわからない。
でも多分、あたしの顔も亜久津と同じで赤いことはわかる。
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