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 ・・・・・・ふと、周りの様子を感じ始めた
意識が戻る・・・とでもいうのか、起きるというのか
どちらが正しいかは分からない

 確かに感じるのは声・・・のようなもの
それは『言葉』という意味には当てはまりそうにない
強いて言うのなら・・・『歌』だろうか
しかし耳に覚えのないフレーズから呪文に近いものだと思う

 呪文という単語から、今自分における状況について疑問を持つ
何が視界の先に広がっているのだろう。きっとろくな場所ではない
ここまでを無意識のうちに考え、目を覚ます訳だが・・・

「・・・・・・・・・・・・あ。起きました?」

 そこには予想に反し一人の、黒猫を思わせる少年と、普通の室内風景があった。

 少年はほかに何も言わず、ただこちらを見ている。
パチパチと薪が燃えているであろう音が響き、さらに静寂さが増す
「えっと・・・あの・・・」
ここで俺は始めて声を出した
何故か久しぶりに声を出した感じがする
どうも記憶が曖昧だ
「森で倒れてたんですよ。あ、コート洗って干してあります」
 少年は何故か顔を赤らめ部屋の壁を指差す
確かに自分で着ていたコートが干してあった
「あぁ…ありがとう…えっと…」
視線戻し少年を見る
簡素な室内は彼の雰囲気に合ってるな、と思った

「あの!いくら男性っぽくても男装はしなくてもいいと思いますよ!」

何を言っているんだこいつは、とも思った
「………は?」
 黒猫のような少年はうつむく
 ………思い出した
確かに自分は何かと異性に間違われる事が多々あった
その件に対しては慣れていたがまさかフォローされるとは
「っぷ…あははは!」
 失礼なのだが思わず笑いがこみ上げてきた
彼は戸惑った顔でこちらを見る
「ごめんごめん!えっと…これでも俺男!」
 片手で髪をくくり、うなじを見せるような体制になる
「えっ…そうだったんですかごめんなさい…」
 落ち込んだ黒猫のように身を縮める彼
なんだか緊張が一気に解けた気がする
彼なら安心して接せられそうだ
「あのさ、名前。
 俺、ノア・ライリーっていうの」
「ルアー… ルアー・オクターヴです」
「そっか、ルアー・・・ね。俺のことはノアって呼んでくれていいから」
「う・・・うん。」
 ・・・・・・僅かな沈黙。自分より彼の方が緊張しているようだ・・・
と思ったが、彼は台所へ向かい包丁を取り出してこちらを向く。
「い゛っ!!?」
思わず身構える。
あははと笑う彼はリンゴ食べれます?と言って背を向けた
今度はリンゴを剥くしゃりしゃりという音が響く
「なぁルアー?ひとつ聞いてもいいか?」
「なんでしょう」
リンゴから目を離さず答える彼。慣れてるなと思う
「この近くの・・・『フランシスカ』って村・・・知ってる?」
一瞬、ほんの一瞬だけ彼の体が強張って、音も止んだ。


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