1-3 [ 3/6 ]

「・・・・・・・・・」
ルアーの止まった手は動き出さなかった。
「?どうかしたか?」
「いえ・・・その村に何か?」
 彼は包丁とリンゴを置いて布巾で手を拭いた。
何か様子がおかしい。
「まぁ・・・ちょっと人探しを。」
 立ち上がり様子を見ようと近づくが、気がついていないらしい
「お知り合いですか・・・?」
「いや・・・多分違う・・・」
 ルアーの隣に立ち返事をする。
すると異様なまでに肩をびくっと動かす。
まるで他のことに集中していたかのように・・・
「!!お前!指・・・!」
 彼の手元を見るとそこは少量だが鮮血で染まった布巾があった。
これを見られまいとしていたのだろうか。
「えと・・・」
「それにお前その年で一人暮らしか?おかしいだろ!」
ずっとおかしいとは思っていた。
こんな森の中、子ども1人で住んでいる事に。
もし近くにその村があるのなら何故そこで暮らさないのか。
 ルアーは俯いたまま、細い声でこう話し、
「もともと…両親と此所に住んでいて…
 親が死んでも…ここに住みたくて…」
 これ以上はと黙り出した。
「そっか…ごめん」
 彼なりに考えた結果なのか。
「それで…村は知ってるので明日案内します…」
「無理しなくていいんだぞ?近くにあるって分かっただけで十分だし」
「たまには行きたいなって思ったんです。
 村の中央にある図書館に用があって」
「…なら…頼もうかな」
ルアーは絆創膏と小さくつぶやいて、自分の側から離れて行く。
その後ろ姿を黙って見送った。
初めて会った人間の心情がこうも分かるのモノだとは思わなかった。
「なんか…あったんだな…」
 と、無意識に口からこぼれた。

日は変わって次の日
 借りた布団から起き上がり辺りを見渡した。
 隣ではルアーがすやすやと眠っている。

 あの後ルアーは何事もなく戻ってきて、色々と話をした。
今までの暮らしや得意なこと。
 どうやら彼は魔術師らしく、それについては何よりも熱く話してきた。
「魔術師と魔導師は違うんですよ!あんなのと一緒にされると腹が立ちます!」
 と、深夜まで熱く語られたものだ。
何を言っているかは分からなかった。

 昨日の事を思いだし顔を洗おうと立ち上がる

「うわっ」
服の端を掴まれていて引っ張られ、
その反動で後ろに倒れる。
その先にはルアーが…
 潰してしまうと思った時、後頭部に強い衝撃を受けた。
背中全体がひんやり冷たい
「…?」
「びっびっくりした…」
 叫び声で目を覚ましたらしいルアーが声を上げた。
振り替えるとドーム状の氷が彼の周りを覆っていた。
自分はそれに寄りかかっていたらしい。
「何だ!?これ!どこから急に…!」
氷をばんばんと手のひらで叩くが、溶ける気配がない。
「魔術ですよ…空気中の水蒸気を集めて状態変化をさせただけです…」
「ま…魔術…」
「昨日言いませんでした?魔術はカノンといってその元になった人は状態変化を「おっ覚えてる!」
 昼まで語られそうだ。
とりあえず実際に見るのは初めてで、非日常感がとても凄い。
魔術を司る人間は多くないのだ。
「とりあえず支度しましょう」
溶けない氷は一瞬で霧と化し、乾いた空気中に舞っていった


[*prev] [next#]
top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -