小説 | ナノ



アロマなあの子
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人間には睡眠欲と言う欲があり、眠気を感じると寝てしまう。日頃から規則正しい睡眠をとっていれば、名前を呼べば起きただろうけど、今のような寝不足状態で寝ているときは呼んでもなかなか起きない。

「あーあ。これ完全に寝てるぜ」
「仕方がないわ。夜遅くまで解析してたんだから…」

ハノイの手がかりになるデータかもしれないと夜遅くまでデータの解析をしていた遊作はついに解析に成功した。結果は無関係だったけど。遊作は解析に睡眠を削り続け、ついに限界が来た。たまたま隣にいたなまえの肩にもたれ掛かってしまい、今は寝ている。

「でもこのままだとなまえ動けなくない?」
「大丈夫よ」

と言って一冊の文庫本を鞄の中から取り出した。遊作が起きるまで読むつもりらしい。なまえは本のしおりを外して読書を始める。
そして、一時間が経った。遊作はまだ目を開けない。なまえは三十分前に本を読み終えてたが、また最初っから読んでいる。なまえ曰く「伏線だらけの面白いお話だからもう一度読みたい」らしい。俺から見たら、ただ遊作に気を使ってるだけにしか見えないけど。しかし、姿勢を崩さずに保ち続け、同じ内容の本を読み直すことになまえの集中力が切れ始めていた。時期になまえは目を閉じて眠ってしまった。

「…おい、遊作起きてるんだろ?」
「…」
「なまえなら眠っちまったぜ」

遊作は目を開けると、俺を睨みつける。なんで分かってたのかって顔をしている。賢いアイ様は呼吸のリズムやちょっとした動作で気づけるんだよ!

「起きたなら起きたで言えば良かったじゃん」
「うるさい」

遊作はもたれ掛かっていたなまえの肩から離れると、次は遊作の肩に向かってなまえが倒れる。遊作の肩となまえの肩が触れた瞬間、なまえが目を覚ました。

「…あぁ、遊作起きてたのね。ごめんなさい。私眠っちゃってて…」
「いや、大丈夫だ。俺こそ悪かった」
「ううん、気にしてないわ。それより遊作、寝不足が続いてたんだからちゃんとベッドで寝た方が良いわ。」

帰りましょう。と言ってなまえは立ち上がった。ホントなまえは遊作に甘いよなー。


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