俺の家に隣川さんはやってくる。適当に作った飯を二人でつつきながら、話をする。
俺はこの人の話す話が大嫌いだ。
久しぶりに会ったのに口から出るのはいつもの様に家族の話。息子がテストで満点とっただとか、奥さんがどうとか。
俺が嫌がるのをわかって、ニコニコと優しい笑みで話続ける。
だから、この人の食事は大嫌いだ。
飯のうまさが一切わからない。さっさと平らげる。皿の上のものが減っていくと、今度は奥さんとの性生活についてリアルに話し始める。
本当に嫌気がさす。

俺が隣川さんと出会ったのは二年前で、俺はまだ高校生だった。なんとなく知り合ってなんとなくセックスをした。左薬指に指輪をしていたことも気付いていたけど、はじめてのセックスではじめての快感を覚え、人肌のあたたかさを教えこまれてしまった。
高校を卒業してフリーターになってからもこの人との関係は続いている。気付けば息子は小学生になっていた。

「…いい加減にしろよ、そんな話……」

かちゃん、と皿に箸を乗せて立ち上がる。

「ごめん、怒った?」

そんなこと一切思ってないくせに。いつものお決まりのセリフ。
食器を流し台に運ぶと隣川さんが後ろから抱きしめてくる。

「ごめんって…許して?」

ちゅ、ちゅ、と唇を軽く吸いながら喋りかけてくる。
ああ、隣川さん、あたたかい。気持ちいい。
キスに夢中になっているとするりと腰を撫でられる。

「や、やだ…んっ、風呂…」
「いいじゃないか…」

俺が軽い潔癖で風呂入ったあとじゃないとセックスするのが嫌だってことをわかってる。この人は確実に。

わざとだと思う。
全部。

「で、んき…けしっ、ん!」
「もっと、希(のぞむ)のことが、見たい」

そんなことひとつも思っていない、この人は。
電気を消さないことも、風呂に入らないことも、幸せな家庭な話しをしてくることも、全部わざとだ。
俺が嫌がるのを楽しんでいるのだ。愉快だと感じているのだ。

それでも、俺は、離れられない。
奥さんのフェラの話を聞けば、その日は必ずフェラをした。奥さんよりも気持ちいいと言われたくて。頑張ってみる。そのとき、頭を撫でてもらえた瞬間が一番の幸福を感じるのだ。
奥さんよりも、子供よりも、本当は隣川さんに必要とされたかった。

でも、そろそろ限界を感じていた。
それでもやめられない。
俺に生きる幸福をはじめて与えてくれたのは隣川さんだった。
隣川さんと出会えたから俺は存在しているようなものだった。

「やっ!ゴム、してっ」
「生の方が、好きなくせに」
「あっあ、んんっ…!!」

だから、離れることもこれ以上近づくことも出来ない。
俺は、隣川さんに気付かされた心を、今日も隠して奉仕する。

力いっぱい抱きついて、たくさんキスをする。





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