ベッドを背もたれにしてカーペットの上に座る猛と、ベッドの上でごろごろする俺。ぼんやりと二人でテレビを眺める。猛が適当にザッピングする。その手が止まったのは、音楽番組だった。アイドルグループが披露しているところ。ちらりと猛を見るとまっすぐとテレビを見つめている。
「お前、このセンターの子好きだろ?」
「はあ?んなことねーよ…」
好きなら好きと言えばいいのに。男子高校生なんだから、当たり前のことだ。
「あ」
アイドルグループが終わって、次に出てきたのは、男のアイドルグループだった。
「……なに、お前、こういうのが好きなわけ?」
「うーん、嫌いじゃないけど」
「そうかよ」
舌打ちと怒気を含んだその一言だけ残して、猛は民放に切り替えた。かっちりと髪の毛をきめたおじさまがニュースを坦々と読んでいる。
すねた。
本当に子供だな、おい。
くすりと笑って、ベッドから抜け出し、猛の隣に座る。そのつまらないニュースを聞き流しながら、口を開く。
「俺、さっきの子、気になってんだ」
「………」
「特に容姿」
無視する猛の方に顔を向けると眉間にしわ。端からみると真面目に現代社会を考えているようだ。
「だって、猛に似てるから」
猛は、はっと一度目を見開いた。少しだけこちらを向いた。
「顎のラインとか…」
手の甲でするすると猛の輪郭をなぞる。
「眉毛とか…鼻とか、耳とか…」
こり、と耳の軟骨を指先で遊ぶ。そこには数個ピアスが控えめについている。
その指先で、今度は唇を撫でる。
「唇、とか…」
両手で頬を包み、見つめあう。耳が赤くなっていることに俺が気付かないはずがない。かすかに震える吐息を放つ猛に煽られる。
「あ、でも瞳は猛の方が、好きだよ」
まっすぐで、澄んでいて。
ちゅ、と優しく唇に触れると、もっと、と言わんばかりに猛が何度も触れた。
その後、ぎゅ、と腰に手を回され、抱きしめられる。肩に相変わらず震える吐息を感じる。
「…俺も、同じこと…考えてた…」
「自分があのアイドルに似てるって?」
「バッ!ちげーよ!」
ぐ、と肩に力を入れられ、引き剥がされる。にやにや笑う俺に呆れたようにため息をついてから、ななめ下を向きながら、猛は話す。
「あの子が…似てるって…」
おんなじようなこと、考えてたんだ。
あー、抱き締めたい。
「ふ、でも、あっちは女の子だぞ?俺はあんなに可愛かねーよ」
目も普通の大きさだし、男としてはやや華奢だが、女の子ほど細いわけではない。あとは、少しまつ毛が長いくらい。
「可愛いよ、あいつなんかより」
顔をあげて、珍しいこと言ったと思ったら、猛は顔を真っ赤にした。
「いや!その、なんでもねーしっ!」
なんとか挽回しようと謎の言葉を並べ続けて、猛はだんだんと小さくなっていき、膝をたて、その上で組んだ腕の中に顔を埋めた。耳が真っ赤だ。なんて愛しいんだ。
「猛」
ぴくりとかすかに動き、黙り込んだ。肘を撫でる。猛の腕の上に頬を乗せる。猛の呼吸音が聞こえる。心地よさに瞼を下ろすと、鼓動音も聞こえた気がした。
「猛のそういうとこ、俺、好きだよ」
頭を回転させると、少しだけ顔をあげた瞳とぶつかった。
「…本当か?」
「嘘ついたって、しょうがないでしょ」
くすりと笑って頭を撫でる。やや傷んだ髪質は犬を撫でている気分にさせる。揺れるしっぽが見える。
頬にキスをし、指を絡める。皮の硬い、この手がすごく好きだ。
「ここ、座って」
ぽんぽんとベッドを叩く。手をとり、立ち上がらせて、肩に手をおいて座らせる。その足の間に立ち、額や頬や瞼にキスをする。しばらく抱きしめあったあと、キスをして、火照った顔を堪能する。
「今日は、特別、な」
嬉しいこと聞けたし。舐めるのは、顎疲れるからあんまり好きじゃないけど。
ベルトを外し、猛の硬さをもったそれを取出し、堪能した。
俺の後ろでは、相変わらず坦々とニュースが語られていた。