「あっち…」

校舎から一歩でるとじわじわと紫外線が肌を刺激し、汗が滲みだす。まだそんなに歩いてないのに。無駄にでけー大学の校門に向かって歩を進めると白いワイシャツと黒いスラックス、短髪金髪の長身の男子高校生が見える。また来てんのかよ、あいつも暇だなー。俺も愛されちゃってんなー、うふっ。とか一人心の中で笑う。
あいつもこっちに気付いた。手なんか振らない。振ったとしても、あいつは振り返すキャラじゃないし。にやりと口元だけ緩める。
すると後ろから呼び止められる。振り替えるとサークルのやつだった。適当にサークルの話をして、別れる。去り際にノリでケツを叩かれた。笑いながら、また目的地に向きを戻すとあいつは鬼の形相で、ずんずんと長い足を使って俺のもとまで来て、腕を引っ掴んでまた歩きだした。

「簡単に触らしてんじゃねーよ、クソッ」

どすの効いた声で呟かれる。その背中は汗でシャツが張りついていた。腕にも汗をかいていた。こいつは何時間、この炎天のもと、待っていたのだろうか。汗をかいたうなじを見て、むらっとくるものがある。
金髪が太陽に照らされ眩しい。チャラチャラとこいつのネックレスがぶつかる音がする。このネックレスも俺があげたものだ。ふっ、と思わず笑ってしまった。

「かわいー」

聞こえない程度の声量で言ったのに、こいつには聞こえてたらしく、黙れクソ野郎と言われた。かわいくない。

「かわいくない」
「ハッ。これからオメーがかわいくなんだろうが」

徒歩5分のところに我が家があり、勝手にドアを開き中に入る。おじゃましますという礼儀正しさは持ち合わせているとこは、かわいい。中から母さんが顔をのぞかせ、ただいまと言うとにこりと笑っておかえりなさいといらっしゃいと仲良しねーを言う。そういうのほほんとした母親なのである。
バタバタと2階の俺の部屋に上がるなり、ベッドに押し倒されてディープキッス。糸が唇をつないだ。こいつは猛という名前がぴったりなほど、野獣的な瞳をしていた。ほんのりと染まった頬、汗ばんだ身体。
首筋に顔を埋めて、ポロシャツの下の汗をかく身体を撫でてくる。
この性急さ、嫌いじゃない。

「ばっか、盛んな、クソガキ」

しかし、まあこの締め切ったクソあちー室内で何十分、もしくは数時間待っていた猛が活発に運動をしたら、熱中症になること間違いない。俺は突っ込まれたまま死なれたくない。肘を身体の間にたて、ストップをかける。
盛大な舌打ちをうけたが、やつは身体を退かし、俺はベッドから落とされ、ふて寝し出した。
へそ、曲げちゃった。このでけークソガキがかわいくて、しょうがない。
とりあえず、クーラーのスイッチを入れてから、下に飲み物を取りに行く。予想通り、母さんが既に用意しておいてくれていた。

「母さん、あれある?」
「確か、冷蔵庫にいただいたものならあるわよ」

高級そうな銀紙でつつまれたそれをいくつかいただいて、部屋に戻る。相変わらず暑いが、クーラーのおかげで幾分かは涼しくなっていた。そして、やつは壁と向き合ってふて寝したままだ。
からん、と氷が音を立て、机に置いてから、ベッドに肘かける。

「シャツ、着替えないと風邪ひくぞ?」

うなじを撫でると同時にさらさらと金髪の毛先が指を撫でる。ちゃり、とネックレスの鎖に触る。
そこにキスをする。わざと音をたてて。

「なあ……お前は、セックスするために、俺に会いに来たわけ?」

少し寂しそうな声色にして、囁きかける。

「……そんなん、ちげーに決まってんじゃん」

やっと答えてくれた。つい込み上げる笑いを堪える。

「…こっち、向いて。猛の顔、見たい」

ぴくりと肩を動かしたが、こちらに振り返らない。あとひと押し。銀紙で包まれたそれを取出す。

「チョコレート、一緒に食べよ?」

ゆっくりと猛の横顔が見えて、目がこちらを見ている。可愛くて、くすりと笑ってから、そのチョコレートを自分の口に放り込み、猛の両頬を両手で包み、遠慮なくこっちをむかせる。

「いっ!んむっ」

もしかしたら、ぐきりと音がしたかもしれない。まあ、いっか。
口に入れた冷たいチョコレートを猛に口移し。
それだけにして、唇を離し、俺は口に残ったチョコレートの味を堪能し、唇についたものまで味わった。
猛はというと、むぐむぐとチョコレートを不貞腐れた顔で味わってる。瞳はきらきら輝いているよ?
そのままの体勢で話し掛ける。

「おいし?」
「………ん」

良かったと心から微笑む。こんなガラが悪いのに、甘いものが大好きな猛。

「かわいー」

くすくすと耐え切れず、笑ってしまう。

「うるせえ」
「チョコ、もっといる?」
「……いる」



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