酒も飲める年になる頃には、とっくに俺の貞操観念なんかもろく崩れ落ちた。処女をすてたのは、高校のときだった。寮生活をしていた俺は、ルームメートの先輩に掘られた。先輩が卒業するまで掘られ続けた。そして、先輩が卒業し、ルームメートは同級生に変わったが、そいつにも掘られた。俺はなんだかそういうホルモンが出ているのか。ごくごく平凡な男子のつもりなんだが。
高校を卒業し、ひとり上京した。暇潰しにバイトをし、その貯まった金で、暇潰しのためにバー巡りをした。そして、そこでも知らない男に掘られた。声をかけてくるのは、綺麗なお姉さんでもなく、可愛い女の子でもなく、みんな高身長細マッチョ世に言うイケメンだった。
その中でも、高津さんはよく会っては、可愛がってくれた。
顎髭が似合い、セミロングの髪をハーフアップにしていた。俺は高津さんの目が嫌いで、なにより好きだった。全てを見透かされているようで不快で、不安だった。俺の醜い部分が全て知られてしまうようで。しかし、それが快感でもあった。本当は全てを知ってもらいたかったのかもしれない。
気付いたら俺は高津さんの部屋に住み着いていた。すごく自然の流れだった。もともとここが俺の帰る場所だったかのように、居心地が良かった。
自営業で個性的なインテリアショップを経営し、コンピューターデザイナーの仕事もこなしている彼とは、毎日一緒に寝るわけでも会うわけでもなかった。しかし、俺は高津さんの部屋に毎日帰った。貯まった金は使われることなく、貯まり続けた。金を使わなくなったから、バイトもやめた。高津さんが自営業の手伝いでもするか、と提案してくれたからだ。学校から帰って、気が向いたらインテリアショップの掃除をし、もともと経営学部だった俺はパソコンで事務業も覚えた。
たまに帰ってくる高津さんと食事をし、抱きしめられながら眠りについた。高津さんの匂いはとにかく落ち着いた。きっと、高津さんの匂いが俺の荒れた心を、生活を癒してくれたんだと思う。高津さんと出会って2年が過ぎようとしている頃に、俺にとって高津さんはなくてはならない存在になっていた。

「高津さん、好きだ。あんたが好きだ」

試しに伝えてみた。俺の気持ちを。高津さんはパソコンから目線を俺にうつして、にこりと笑った。

「俺も好きだよ」

立ち上がり、俺を抱き寄せてくれた。
気持ちが高揚した。

「君のからだ」

その一言に、一気に醒める。

俺は本当に男運がない。