「んまぁ、そんなこんなでして…」

バイト終わりに、店長にシフトに関してのうまを伝え、本当にスミマセンと告げると店長は笑顔で気にするなと言ってくれた。

「樹海くんはうちに献身的すぎるから心配してたんだよー。しっかり青春謳歌しろよ!」

大きく口を開いて笑う店長は、かっこいい。白髪のオールバックがなんともいえないおしゃれさとかっこよさをにじませる。まさに、ダンディズム。おじさんだけど、こういうおじさんになりたいと思う。…いや、俺じゃ無理だな。
店長と別れてから、ロッカーに向かい着替えはじめる。先に着替え終わった先輩たちに声をかけつつ、バイトの制服のボタンを外していく。

「おつかれ」

その声に振り向くと、私服姿の竹井さんがロッカーに寄り掛かるように立っていた。素直にびっくりした。そのせいでやや鼓動が早いのだ。うん。

「お、つかれさまです…竹井さんって、今日、いませんでしたよね?」
「うん、シフトを渡しに来ただけ」

そうなんですか、と答えてから、また視線を落とす。ただ着替えをするだけなのに、妙に緊張する。
最後に会ったのは、日曜日。今日は金曜日。実に五日間もあっていない。…五日間も、と言っていいのだろうか。無意識にでも、竹井さんに会いたくなっていた自分が恥ずかしくなってくる。

「樹海くん」

ふ、と気づくと竹井さんはすぐ隣にいて、明らかにどきりとした。
あ…と思ったときには、自然とキスをした。

「…会いたかった」

本当に小声で。俺にしか聞こえない吐息のようなそれに、完全に心臓の主導権をとられてしまった。
ロッカー挟んで隣には、先輩たちが身支度をしているというのに、抱きしめてほしいなんて、思ってる自分。ずいぶん女々しくなったもんだ。
ちょっと、おこがましいかもしれないけど、たぶん、竹井さんも同じ気持ちだと思う。

「…早く、着替えますね」
「うん、待ってるね」

どきまぎとなんとなく久しぶりに会うからか、緊張してしまう。竹井さんは常に余裕があって、柔軟だ。これが四つという歳の違いなのだろうか。



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bkm