週末。一週間ぶりに雄哉に会えるのに、マンションではやっぱりエンジョイ中。鍵を締め直し、近くのコンビニへ向かう。ひたすらに大した興味もない雑誌を読む。
時間は多少前後するが大体七時にマンションに入ればちょうど風呂上がりの雄哉に出くわす。たまに若干のキスマークには目をつむる。一緒に夕飯を食べて風呂入ってベッドインもあれば、そのまま直行ベッドインもある。今日はどうしよう。腹は、そんなに減ってないなあ。でも、ピザ食べたい。あいつはヤッた後だし、腹減ってんだろ。
ふ、と店内に入ってきた人物に目をやった。そこには翔の友達。生まれて二番目に抱いた男の子の、確か…由貴くん…かな。
「あ、樹海くん」
「由貴くん、こんにちは」
「もうこんばんはだよ?」
可愛い笑顔。でも翔とはちょっと違う可愛さかも。
「家、この近くなの?」
「ううん、樹海くんは?」
「俺は友達んちが近くなの」
まあ、セフレは友達で間違ってはいないよな。
そういえば、由貴くんはあいつと同じ高校だ。
「僕の友達もこの近くなんだ」
そのとき、ふわりとシャンプーの匂いがしたんだ。
このシャンプーは、俺も嗅ぎ慣れた匂いだった。
「もしかして、木ノ下雄哉?」
やけに胸がざわめく。
きょとんとした由貴くんの言葉を待つ。ドキドキするともちょっと違うかもしれないけど、表現するならそれが適当だろう。
「なんでわかったの?樹海くんすごい!エスパー?」
ああ、そっか。
ざわめく気持ちが静かになって、新たな考えが頭に過り口が緩む。ドキドキする。というよりももっと匹敵するのが、わくわくする、かな。
そっとリンスがちゃんと効いたさらさらだが、まだしっとりとする髪の毛をすく。綺麗な黒髪がただの蛍光灯に照らされてるだけなのに、輝いて見える。
「ねえ、由貴くん…俺、今すごーく触りたい」
え、と戸惑う由貴くんは頬を簡単に染めた。反応がいい男の子は好き。可愛いんだもん。でろでろに甘やかして、最後には泣かせたい。髪を耳にかけてあげて、あのときにだす声色で吐息を吹きかけながら、囁きかける。
「あの日が、忘れられないんだ」
目の前の可愛い男の子を優しく見つめながら、常備しているコンドームの数のことを考えていた。
結局、俺はコンビニで何も買い物をしないで由貴くんの腰に手を回して無人受付の行きつけのいつもの場所へ向かった。その間もシャンプーの匂いは漂っていた。
早く、夜に溶けてしまえばいいのに。
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