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いきなり理性が働いてしまった。

「い、いや…なんでも…」

ずるりと手が滑り落ちた。



そうだ。俺は、人に愛されるような人間じゃない。
きっと、竹井さんだって、そうなんだ。
俺なんかじゃ、相手にしてもらえない。されてない。
からかってるだけなんだ。遊ばれてるだけなんだ。

浮かれて、バカみたいだ。
なんで気づけなかったんだろう。
俺は、そういう人間なんだ。

俺のことを好きだと口にする人間は、誰ひとり俺のことを好いてなどいてくれてないんだ。
何度も学んだ。
人は嘘をつく。人間が得た知恵だ。
俺、もう、だまされるほど、浅はかでも、バカでもない。俺も知恵を得たんだ。

みんな、みんなみんなみんな。
みんなそうなんだ。

俺なんか、好きじゃない。
好きじゃない。好きじゃない。
必要とされてなんか、いないんだ。

今は、身体が弱ってるから気持ちも弱っていて、誰かにすがりたくなっているだけだ。くだらない。
俺はそんな愚かじゃない。俺は、弱くない。
ひとりで生きていくんだ。そう決めたんだ。
俺は強い。ひとりで生きていけるんだ。

全部遊び。遊び。遊び遊び。

俺には、愛だの恋だの、そんなくだらないものはいらない。
いらない。いらないんだ。




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