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雄哉くんのことがずっと好きだったんだ…だから告白したけど、断られちゃって…でも、一回だけならしてくれるって噂を聞いてたから…だから、本当はそんなの嫌だったけど、でも…でも、どうしても好きだったから、せめて僕の…はじめてをもらってほしくて、あの日、待ってたんだ…

嗚咽混じりに綾ちゃんはそう告げた。あらら、俺はそんなとこに立ち入っちゃったのね。

だから、雄哉くんに…嫌われたくないんだ…そんなやつだとは思われたくない…

「わがままだって、わかってる…っふ、…でも、お願い…」

なんで雄哉にここまで思い入れるのかはすごく不思議だった。その答えは、俺の好きとこの子の好きが違うだけだ。
しゃくりがひどくなってきたから、マフラーをといてコートを脱がす。さらされた首筋には、昨日の行為の産物があった。
じくり、と嫌悪で塗れた何かが身体を走った。そして、それを奥底で嬉々として笑う自分が見えた。
そっと目をこする手を握りしめて、膝の上におろす。親指の腹で、まだ伝い落ちる雫を優しく拭う。すべすべとしたきれいな赤ちゃんのような肌だ。
赤くなった瞳と視線がぶつかると綾ちゃんはかすれ声で、お願いとつぶやいた。
そのしゃくりに誘われるようにキスをして、ソファーに押し倒した。

「んっや…!っ、ふぁ…や、だ…きみ…くっんん!」

綾ちゃんの抵抗力なんて見た目からわかるようなか細いもので、押さえ込むのなんか簡単だった。遠慮なしに口内に入り込み、綾ちゃんに気持ちよくなってもらおうと始出すと抵抗が薄れ、あまい吐息が増えた。
抵抗がなくなってから顔を離して、わざと唇を舐める。

「っふぇ…き、みく…」

綾ちゃんの顔は真っ赤だった。鼻の頭まで。涙は相変わらずぽろぽろと零れ続けていた。その涙を唇で吸い取ってから、首筋に移るとまた抵抗というほど力がない抵抗が始まった。しょっぱい雫が少しだけ味覚を刺激すると、すごく興奮しだした。

「樹海くん…!いや、いやだ…!」

いやだという綾ちゃんの声も、ただの興奮材料にしかならなかった。自分の身体がどんどん黒いものになっていく感じがしていったが、それには目をつむってしまった。

「なんでもするって、言ったよね?」

え、と硬直してしまった綾ちゃん。
こんなことするつもりも言うつもりもなかった。まったく。でも、綾ちゃんは妖艶だったし、昨日の竹井さんを思い出されて少し虫の居どころが悪かったんだ。

「これは、俺と綾ちゃんだけの秘密」

にやりと笑って、キスをした。





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bkm