「ふぅ…」
自分のため息と共にバスタブにためたお湯に水滴が落ちた。前髪を掻き上げ、肩まで浸かり目をとじる。じんわりと染み入る心地よさについつい微睡む。その最中で今日の出来事をおさらい。
綾ちゃんと散歩と称して連れ出して、休憩と称して知り合いのバーにつれこみ、ジュースと称してカクテルを飲ませ、介抱と称してラブホにつれこみ、酔いに任せてセックスをした。
ただいま綾ちゃんはベッドでぐっすり中。その間に俺は身体を洗い、久々に浴槽に浸かっている。
背中がひりひりと痛む。
綾ちゃんは、どうやら初めてだったようだ。初めてが俺なんかで良かったのだろうか。まあ、終わったことはしょうがない。
多少は痛そうだったが、ぐずぐずに溶かしたから気持ちよかったと思う。綾ちゃんは予想以上にお酒に弱かった。あんなカクテルで呂律が徐々に回らなくなっていった。
「ふっ、可愛かったなあ…」
つい笑みがこぼれた。
初めて押し寄せる快感に恐怖心は隠せなかったみたいだ。その証拠が、この背中の痛み。
「俺は…あんなに可愛くねーぞ…」
可愛くもないし、身体つきだって男そのものだ。身長だって百七十はある。声だって高くもない。
竹井さんは、何が良くて俺なのか。
あ、もしかして竹井さんは俺に食われたいのか?
「ははっ、な訳ねー…」
でも竹井さんみたいな男を抱くのも面白そう。オッケーしてくれるかな。
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