「いらっしゃいませ、何名様でございますか?」
きりっとし、営業スマイルな竹井さんの周りにはキラキラしたものが見えてしまう。お客さんの反応はそれぞれだが、入った瞬間ホストクラブだと思う人が多数だろう。たまにわざわざ看板をチェックしに外に出たりする人もいる。
「それではご案内します」
会計を済ますと違う店員が案内をする。あの役はなかなか辛いものがある。がっかりされることが多いんだ。しかも竹井さんの中身を知っていれば知っているほど腹がたつ。少なくとも俺はそう。
お客さんがいなくなったカウンターに肘をつき、竹井さんを見つめる。
「俺、今の竹井さんなら抱かれてもいいわ」
「抱かれてみる?」
きりっとした表情のまま、返す竹井さんは本当にキラキラしてる。
「気持ち良くさせてくれます?」
はらりと髪の毛が少しだけ落ちたのを耳にかけながら、にやりと不敵に笑ってみせる。
「俺に抱かれて失神しなかった子はいないよ」
意外だった。
いつもならこの辺でキャー恥ずかしい!とかごまかすのに。
ふ、と気付いたらキスされた。
「考えといて」
俺は本気だよ、とつぶやいてから、お客さんが入ってきた。
いきなりのことだったからだ。やけに心拍数が高いのは。
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