「うぃーっす」
「樹海ちゃん!!」
「うわっ」
やっぱり面倒くさいことになるよ。
「うわって何?ひどくない!?って、そんなことはどうでもよくてさ、なんなの!?あのちんちくりん!」
ちんちくりんって、この人何時の時代の人?
目の前でぎゃーぎゃーと喚き続ける竹井さんは、確か俺の四個上。毎回確認してしまう。
「あのちんちくりん、樹海ちゃんの何!?ていうか無関係だよね!」
「なんていう返しが一番嫌ですか?」
「彼氏」
「じゃあ彼氏です」
また喚きだす竹井さん。
これがちっちゃくて可愛い男の子だったら、毎日ホテルに連れていく。多分、職場でヤる。一回やってみたいんだよね、職場セックス。
「樹海ちゃんがちんちくりんな人が好きなら、俺はちゃらんぽらんになるよ?いいの?」
残念ながら、そんな夢はこの人のせいで消え去った。
「もうちゃらんぽらんじゃないですか…」
目の前には多分雄哉よりも身長が高く趣味で筋トレをこなし、しっかりと筋肉のついた、スタイルも顔もその辺のモデル顔負けの男じゃね。しかも何いってるのかわからない。なのに、大学は浪人してでも入りたがる人がいる最難関大学。多分これだけでその辺の女子は落ちるだろう。現に竹井さん狙いで来ているお客さんもいる。
「俺がちゃらんぽらんだったら、ここは既に潰れていたよ」
俺がこのカラオケボックスでバイトをし始めた理由の中に実は竹井さんも入っている。とある女の子とここに来たとき冷静に仕事をこなす竹井さんに憧れを抱いたから。仕事が出来ることに関してじゃなくて、竹井さんの立ち振舞いが格好良かったから。
それが、中身はこれだった。
「樹海ちゃんは、ちゃらんぽらんな俺も好きだもんね?」
いつ俺があなたを好きだと言いましたか?
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