カタリナ
- ナノ -

24 僕と君の永遠共有

※ifで、もしまだ鉄血の子供達の一員だったら。レクターお相手で閃U舞台。


クレアと再会出来てユミルに戻って来たリィン達だったが、ミリアムは久々に会えたクレアと会話をしていた。親しい兄や姉のような存在である同じ子供達の近況がミリアムも気になっていたのだ。
そんな会話をしている所に街を回っていたリィンがやって来た。自分が聞くべき話ではないだろうかと直ぐにその場を離れようとしたが、ミリアムもクレアも気にしなくていいとリィンを引き留める。


「レクターさんとは連絡は取っているんですか?」
「いえ、クロスベルに行ってから連絡はありません。あの蒼い靄もありますし、通信障害があるのかもしれませんね」
「アリシアもレクターに付いて行ってるんだよねー。ぶー、ボクもアリシアと遊びたいんだけどなぁ」
「アリシアさんって、確かレクターさんと一緒に居た……」


ノルドの地で一触即発の状態だった帝国軍と共和国軍の交渉の場を設け、戦争を回避した切れ者のレクター・アランドールの横に居た自分達とそう歳も変わらなさそうな少女ーーそれがアリシア・フルフォードだった。隙のない立ち姿で、レクターをサポートする彼女はクレアと似た冷静さを兼ね備えているような印象を受けた。


「えぇ、皆さんと同じ歳で……私より長く所属していますね」
「……同い年って聞くと、凄いな……ちなみに、どんな人なんだ?」
「アリシアってレクターと似てるよねー」
「そう、ですね……レクターさんと一緒に居る時と居ない時では少し様子も違いますけどね」
「そーそー!レクターと一緒に居ないと、アリシアってレクターとそっくりなんだよね〜お茶目で飄々としてて自由でマイペースな所が」
「えっ」


ミリアムの言葉にリィンは驚きを隠せなかった。見た目と雰囲気からはとても想像付かないような性格だったからだ。というか、レクターさんはそんな性格だったのか、とリィンはレクターの言動を思い出す。軍人として無駄の一切ない手腕で交渉を進めていた印象が強いが、クロスベルに行く前トリスタに来てミリアムと交わしていた会話の様子を思い出すと彼は納得出来る所もある。


「アリシアはレクターのこと恩人って言ってたけど、二人に何があるのかは分かんないや。結構前からの付き合いらしいケド」
「並々ならない信頼関係があるのは確かですね。アリシアさんは……閣下以上に、レクターさんに対する想い入れが強いですから」
「そう、なんですか……?」
「オジサンのこと苦手って言ってた位だし!」


鉄血の子供達という位だから彼に対する忠誠心も当然強いものだと思い込んでいたが、どうやらそうではないらしい。アリシアが所属している理由はただ一つ、レクターが居るからだった。感情表現に乏しく、自分の感情で行動することがなかったアリシアの世界をレクターが変えたことは、クレア達も知らないことだった。


「ボクもたまにはアリシアと一緒に居たいのに、レクター大人げないんだよね〜」
「何時もレクターさんと居るのか?」
「個別任務が入らない限りは大体一緒に行動してますね」
「あはは、だってレクター、アリシアのこと大好きだし」
「アリシアさんもレクターさんに懐いていますが、ふふ、本人はきっと否定しますね」
「だよね〜ニシシ、レクターには照れ屋だし」


第一印象とはかなり違うアリシアという少女の話を聞き、ちょっとした興味も抱く。レクターと親しいという同い年の少女ーーミリアムとクレアの非凡な才覚を知っているから当然同じく一般人離れした能力もあるのだろうが、性格を聞く限りやはり個性派が揃っているようにも感じる。


そして人も居ないクロスベルのしんと静まり返った駅のホームに、二人の姿はあった。
レクター・アランドールとアリシア・フルフォードーー情報局に所属する、ミリアムとクレアより前から鉄血宰相の元にいる二人だった。

蒼い靄のせいでクロスベルから外には出られないし、帝国から連絡も入らない。あちらに残っているクレアとミリアムが気掛かりだった。


「帝国も内戦中だし、クレアとミリアムは大丈夫かしら」
「まーあいつらなら滅多な事ねぇだろ。むしろ俺達が心配されてる頃だろ。こんな所でのんびりロイド達待ってるより、ミリアムの面倒見たかったか?」
「……まぁ、ミリアムの安否は気になるし、助けてあげたいけど、私はレクターの隣に居るってとっくの昔に決めたの」
「……アリシア」
「な、なにそんな真面目な顔して……」
「今のプロポーズと受け取っていいんだよな?」
「へっ!?」
「まさかアリシアに先越されるとはなァ〜俺から言おうと思ってたのに一本とられたぜ。よし、俺と結婚するか!」
「ばっ、バカなこと言わないの!」


レクターの発言に慌てて否定するが、顔は真っ赤で目が完全に泳いでいるアリシアにレクターは満足げに笑ってあやすように頭を撫でる。
レクターにしたら強ち冗談ではなかったのだがーー照れるアリシアをこれ以上つつくとそっぽを向かれてしまうだろう。長年の付き合いだからか、自分に対して素直じゃないのは好意の裏返しだと分かっていた。

アリシアも内心本当は嬉しかったことは黙っておこうと、鼓動早まる胸を押さえた。

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