ヅラから電話で起こされた。「今すぐ美月の家に行かなくちゃならないのだ、という訳で5分後に公園に集合!」と怒鳴られた。難儀な世の中じゃ。だが公園に着くと、ほぼ同時に全員が揃った。わしらはやれば出来る子じゃ。小さい頃しか言われんかったが、今でもそうかもしれん。 美月の家に行くと、お花見に行こうといつもより嬉しそうな笑顔の美月が言った。確かにこんなにポカポカした日にはぴったりじゃ。 「うわー!」 角を曲がった所で美月が声を上げた。少し先に見える、川沿いの桜並木。もう大分散りかけじゃが、まだまだ綺麗に咲いちょる。 美月が走って土手を降りていく。 「こけるぞ、美月!」 「ぎゃ!」 ヅラが叫んだ瞬間、美月の姿が消えた。 「ぶ、」 「アイツやっぱ馬鹿だ」 「アッハッハ」 「お前ら、まずは身を案じろ!」 ヅラが怒って、美月の消えたところへ走っていった。少し早足で、銀時と晋助がその後を付いていく。 ヅラはまるで美月の保護者じゃ。いつもいつもアイツのことを心配して、一番に考えて。家族、のようにも思える。よく分からんが、家族のようであって欲しいと、思う。 「オイ辰馬、何してんだー」 「いやあ、なんでもないぜよ」 いつの間にか止まっていた足を、また動かした。 ▼ 「じゃーん!」 「凄いじゃないか、美月!」 「うまそうじゃのー!」 「やれば出来るんだな、お前」 「……」 美月が自慢げに開いた弁当は、いつものとは違う手の込んだ物。 「さー食べよう!いただきます」 「いただくぞ、美月」 「いただきー」 「もらうぜよー」 美月の声で、全員の箸が宙を待った。と言うのは大げさかもしれんが、とにかくここは戦場じゃ。 「ちょ、落ち着け!あ、ありがとうコタ」 「うむ、構わん」 ヅラがまず美月の分を取って、それから自分のを取り出した。家族ちゅうよりは、母娘かのう。 「どうどう、おいし?」 「いやあ予想外のうまさだわ、これ惣菜?グフッ」 銀時の脳天に美月の肘が吸い込まれていった。 「美月の味がするだろうが」 「そんなの分かるか!」 「銀時はまだまだじゃのー」 「じゃあお前分かんのかよ、もじゃもじゃ!」 「分かる分かる、美月の味じゃあー」 「アンタがいうとなんか気持ち悪いからやめて」 美月がプイ、と顔を逸らした。耳がちょっと赤い。 「あり、」 「どうした、辰馬」 「い、やあー!あんまり美味しいもんでびっくりしたぜよ!」 「なにそれ、嘘臭い!」 「いや、美月、本当にうまいぞ」 「コタのは本当っぽい。不思議」 耳が熱い。さっきの美月より赤いかもしれん。 「辰馬、顔赤いよ。どうしたの?熱でもあるの?」 ひたり、 「っ、美月!」 「え、どうしたの…」 美月の手が額に触れた瞬間、後退った。体が勝手に。ついでに無意識な声も。 「おい、お前…」 「なんちゃあない、悪いの。まだ眠いんかもしれん」 笑って誤魔化したけど、全員が納得しない顔をした。 「ほれ、食うぜよ!」 「う、ん…」 「そうだな、折角の弁当だ」 「俺ちょっと便所」 「俺も行く」 「なに?俺と連れションしたいの、晋助くん」 「死ね、行くぞ」 何とか元通りになった(様な気がする)空気の中、弁当を食べた。銀時と晋助は少しして戻ってきて、晋助は卵焼きばっかり食っちょって、皆で弁当を綺麗に食べて、桜の木下で5人で昼寝をした。眠れはせんかった。弁当を食べている時も、今も、一つの疑問が頭を巡る。 【4:さくらいろ】 アレは、なに。 top>main>ag series>Revolve!>Revolve! text |