REVOLVE! | ナノ
ヅラから電話で起こされた。「今すぐ美月の家に行かなくちゃならないのだ、という訳で5分後に公園に集合!」と怒鳴られた。難儀な世の中じゃ。だが公園に着くと、ほぼ同時に全員が揃った。わしらはやれば出来る子じゃ。小さい頃しか言われんかったが、今でもそうかもしれん。

美月の家に行くと、お花見に行こうといつもより嬉しそうな笑顔の美月が言った。確かにこんなにポカポカした日にはぴったりじゃ。


「うわー!」


角を曲がった所で美月が声を上げた。少し先に見える、川沿いの桜並木。もう大分散りかけじゃが、まだまだ綺麗に咲いちょる。

美月が走って土手を降りていく。


「こけるぞ、美月!」

「ぎゃ!」


ヅラが叫んだ瞬間、美月の姿が消えた。


「ぶ、」

「アイツやっぱ馬鹿だ」

「アッハッハ」

「お前ら、まずは身を案じろ!」


ヅラが怒って、美月の消えたところへ走っていった。少し早足で、銀時と晋助がその後を付いていく。

ヅラはまるで美月の保護者じゃ。いつもいつもアイツのことを心配して、一番に考えて。家族、のようにも思える。よく分からんが、家族のようであって欲しいと、思う。


「オイ辰馬、何してんだー」

「いやあ、なんでもないぜよ」


いつの間にか止まっていた足を、また動かした。









「じゃーん!」

「凄いじゃないか、美月!」

「うまそうじゃのー!」

「やれば出来るんだな、お前」

「……」


美月が自慢げに開いた弁当は、いつものとは違う手の込んだ物。


「さー食べよう!いただきます」

「いただくぞ、美月」

「いただきー」

「もらうぜよー」


美月の声で、全員の箸が宙を待った。と言うのは大げさかもしれんが、とにかくここは戦場じゃ。


「ちょ、落ち着け!あ、ありがとうコタ」

「うむ、構わん」


ヅラがまず美月の分を取って、それから自分のを取り出した。家族ちゅうよりは、母娘かのう。


「どうどう、おいし?」

「いやあ予想外のうまさだわ、これ惣菜?グフッ」


銀時の脳天に美月の肘が吸い込まれていった。


「美月の味がするだろうが」

「そんなの分かるか!」

「銀時はまだまだじゃのー」

「じゃあお前分かんのかよ、もじゃもじゃ!」

「分かる分かる、美月の味じゃあー」

「アンタがいうとなんか気持ち悪いからやめて」


美月がプイ、と顔を逸らした。耳がちょっと赤い。


「あり、」

「どうした、辰馬」

「い、やあー!あんまり美味しいもんでびっくりしたぜよ!」

「なにそれ、嘘臭い!」

「いや、美月、本当にうまいぞ」

「コタのは本当っぽい。不思議」


耳が熱い。さっきの美月より赤いかもしれん。


「辰馬、顔赤いよ。どうしたの?熱でもあるの?」


ひたり、


「っ、美月!」

「え、どうしたの…」


美月の手が額に触れた瞬間、後退った。体が勝手に。ついでに無意識な声も。


「おい、お前…」

「なんちゃあない、悪いの。まだ眠いんかもしれん」


笑って誤魔化したけど、全員が納得しない顔をした。


「ほれ、食うぜよ!」

「う、ん…」

「そうだな、折角の弁当だ」

「俺ちょっと便所」

「俺も行く」

「なに?俺と連れションしたいの、晋助くん」

「死ね、行くぞ」


何とか元通りになった(様な気がする)空気の中、弁当を食べた。銀時と晋助は少しして戻ってきて、晋助は卵焼きばっかり食っちょって、皆で弁当を綺麗に食べて、桜の木下で5人で昼寝をした。眠れはせんかった。弁当を食べている時も、今も、一つの疑問が頭を巡る。



【4:さくらいろ】


アレは、なに。



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