深く考えないで、
「好きな人いる?」と言われれば私は迷うことなく“彼”の名前を言うだろう。そしてそれを聞いた人は「変わってるね」「高望みし過ぎじゃない?」と言う。
「変わってるね」
なんてよく言われるよ。もう言われ慣れたし聞き飽きた。他に言うこと無いのかな?
「高望みし過ぎじゃない?」
ははっそれはキミじゃないの?“彼”は直ぐに手に入る所にいるよ。キミらが気づかないだけだよ。
それに、例え“彼”が手の届かない場所に居ても私が“彼”を好きでいるのは私の自由。そうでしょう?恋愛は、自由なんだから。
『そう、思わない?』
「ハッ、くだらねぇ」
『でも事実じゃない。私は“彼”を手に入れたのよ真』
真が笑う。それにつられて私も笑う。
私は手にいれたの。ずっと欲しかった“彼”を、私のものにできた。その代わり私は“彼”のものになれた。
『私は幸せ者よ。“あなた”を私のものにできたのだから』
「俺は心愛のものになったつもりはない。お前が俺のものになったんだ」
『ふふっ、さすが真。よく分かってるわね』
真みたいな人間が手に入って鼻が高いわ。自慢できる。
私の大好きな花宮真。
私の大切な花宮真。
私の生き甲斐の花宮真。
『ふふっ』
「何笑ってんだ。気味悪いな」
『あら、失礼しちゃう』
私はただただ嬉しいだけなのに。君のものになれて、私の物に出来て。
『真』
「ん、」
唇を重ねれば、全てが筒抜け。私の考えていることが真にバレてしまう、真の考えていることが私にバレてしまう。嬉しいわ。たったそれだけでも、嬉しいの。
深く考えないで、
(考えちゃダメ)
(失敗するわ)
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