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キスミー・マイベビー

『あーーかしくん』
「………」
『あーかしーさまっ』
「………」
『せーいくんっ』
「………何なんだ」

何度も色んな呼び方をするけど、彼は名字では反応してくれないらしい。
ベッドの上で必死に本を読む彼。
その横顔にときめきを覚えながら、ニマニマと笑ってもう一度呼ぶ。

『せーいくん』
「…どうしましたか、心愛ちゃん?」

私のノリに諦めたのか、溜息を吐きながらも乗ってくれる征くんの腕にぎゅうっとしがみつく。
それには嫌な顔をすることもなく顔を近づけてくる彼の顔は、やっぱり世界一格好いいと思う。

『本ばっかり読まないで構って』
「……仕方ないな」
『えへへ、好き』
「全く、」

玲央くんが言ってた。
心愛ちゃんと会ってすぐの征ちゃんは、すっごく上機嫌なのよって。
征くんは機嫌とか関係なしにいつだって優しいけど、小太郎くん曰く、それは私にだけらしい。

『征くん、』
「何をご所望で?」

まるで、姫様とでも呼びそうな口調で言う征くん。
無言ですりよれば、分かりましたとばかりに頭を優しく撫でてくれる。

『……征くんの手、好き』
「それは手だけかい?」
『ううん、』

じーっと目を見つめれば、彼の瞳は私だけを捉えていた。
この世界に2人だけでいるように錯覚して、幸せという感情が胸に流れ込んでくる。

『征くん、キスして』
「……今日はよく甘えるね」

ちゅ、とわざと音を立ててキスをする。
それを離して見つめあえば、足りないとばかりにもう一度。

『んっ、ふ、ぁ』
「……ん、」

啄むように口づければ、もう足りない。
ニコ、と微笑めば、ぐらりと視界が反転する。
真っ白な天井が広がり、隙も与えずに、また征くんのキス。

「心愛、」
『っん……?』
「そんな可愛い顔、僕以外には見せるなよ」

征くんは、私がどれだけ征くんを好きなのか分かってないらしい。
私はもう、征くん以外は考えられないほど溺れてるっていうのに。

『征くんも、私以外を映さないで』

彼の綺麗な瞳を見ながら呟いた。
当たり前だろ、という彼の返事は、蕩けるようなキスと共に、頭に流れ込んできた。



君だけのキスがほしい
(溺れるように愛する日も)
(あったっていいよね)

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