そのひととなり


ハウンドはガーラス9の捕虜収容所で働くごく普通の真面目な看守だ。人と比べれば、若干、言葉は出にくい。それ以外は、職務に忠実だがこれといって高い地位にいるわけでもない男だった。

ハウンドの主な仕事は捕虜達の尋問だ。
捕虜達から敵の情報を得る仕事で、ハウンドはこの仕事が好きでも嫌いでもなかった。捕虜達に若干強めの刺激を与えたり、弱らせたり、ブレインサーキットを機械に接続したりしてひたすらに情報を得る。与えられたノルマを達成できなかったり、使い終わった捕虜の後片付けをしなかったりして、たまにどやされる事は有ったがそれなりに安定した毎日を送っていた。

そんなハウンドだが、彼には尊敬する人物がいた。大昔の大戦で活躍したというギャロウズ中将という人物だ。
尋問の勉強のためにハウンドはたまにデータを見る。様々な方法を試すのだが、一番効率が良いのはやはりギャロウズ中将が用いたものだ。以前、資料の中に出て来た大戦中のある作戦にもギャロウズ中将の名前が出て来て大活躍だった。ハウンドは純粋にギャロウズ中将に憧れた。
大戦後、彼の名を聞かないのでおそらくは死んでしまったのだろうが、それでもギャロウズ中将はハウンドのヒーローだった。
ギャロウズ中将の名前が資料に出てくるとワクワクして、仕事にも熱が入った。

そんなハウンドの毎日を変えたのは、あるスパイのブレインサーキットから情報だった。
ブレインサーキットからの情報抽出は少しコツがいる。頭部を切開し機械に直接繋ぐのだ。医者でも看護師でもないハウンドは何度か失敗したことがある。とにかく成功したら、スパイは全身を痙攣させる。
その時も捕虜の反応に異常が無い事を確認してから、抽出データを見ていた。ハウンドがあくびをしながらデータを見ているとその中にギャロウズ中将という言葉が突然出て来たのだ。

ハウンドは思わず立ち上がった。
その調子に捕虜の口輪が外れ絶叫が響き渡った。ハウンドは血反吐を吐きながら叫び続けるスパイに口輪を付け直す。
何事かと飛んで来た上司に軽く叱責を受けてから、ハウンドはまたデータを覗く。仕事で必要なデータを集めてから、ハウンドは自分のヒーローについてのデータも漁る。

ギャロウズ中将はまだ生きていた。ミニボットになり、名前をトラックスと変えながらもある巡宙艦の艦長をしているらしい。
ハウンドはその様子をぼんやりと夢想した。彼の下での働く自分を思い浮かべニマニマと笑う。
例の上司に拳骨を食らうまで、ハウンドは想いを膨らませていた。

ハウンドが頭を抱えていると、上司は呆れながら言った。
「またギャロウズ中将か?……あれ?この艦なら最近ガーラス9宛に人員要請があったはずだが…」
ハウンドは再び勢いよく立ち上がった。再びスパイから口輪が外れたが、既に静かだったので大丈夫だった。
上司は瞳を瞬かせてから、ニヤリと笑った。
「行ってみるか?」
ハウンドは激しく頷いた。


ハウンドはガーラス9の捕虜収容所で働くごく普通の真面目な看守だった。

しかし、今ではあのギャロウズ中将の、いや、トラックス少佐の部下だ。
ハウンドは期待を胸に艦に飛び乗った。

mae ato
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