そのひととなり


食べるものに困ったら、まずは草木を食べなさい。次に家畜を食べなさい。それから、同族を食べなさい。
自分は食べられないようにしなさい。

バラージはインセクトロンというトランスフォーマーで、フロロン5のシオール鉱山近くで19人兄弟の18番目として産まれた。19人兄弟といっても大人になったのはバラージを含めて6人だけだった。
フロロン5はインセクトロンにとっては非常に住みづらい星だ。
よく飢饉に見舞われ、時たまアンティラサビ(宇宙サビの一種)が発症する。挙句にフロロン流星と呼ばれるインセクトロンだけに毒性がある隕石が頻繁に降る。
それでも、バラージの両親は代々暮らしていたフロロン5に居を構えた。
もっともその両親もバラージが大人になる前に飢饉で死んだ。
両親の最後の教えは、
『食べるものに困ったら、まずは草木を食べなさい。次に家畜を食べなさい。それから、同族を食べなさい。自分は食べられないようにしなさい。』
であった。その年の飢饉で、バラージの兄弟は2回くじを作り、ひいた。
バラージは2人の兄と父母を食べた。
誰も泣かなかった。

それからも、2回の飢饉があった。
次の飢饉が起こると、バラージの3番目の姉は、銃を持って5アストロメートル以上離れた隣家を訪ねた。その年は、そこで得た3人分の肉で乗りきった。
その次の飢饉では運の良いことに、旅人が来た。バラージは初めて人を殺した。

大きな飢饉を3回経験し、バラージは大人になった。バラージの1番目の兄はどこで手に入れたのか、わずかな金とデストロンのエンブレムをバラージに渡した。
『俺たちより、幸せになれ』
兄はそう言って、バラージを送り出した。

デストロンのインセクトロン部隊に入ったバラージは生まれて初めて腹一杯食べることを知った。
食べることだけでなく、世の中にはいい女がいること。フカフカのベッドがあること。洒落たアクセサリーがあること。嫌な奴を苛め倒せること。様々な事を知った。

たまに、老兵から『戦況が悪くなったら、お互い食い会わなくちゃならねぇんだぜ』と脅される。
バラージはそれを聞き、場に応じて怖がるふりをする。

でも、分かっている。粗雑で頭が悪く、口も立たないバラージでも分かるのだ。

人生は、食べられたら、負けだ。
生きたければ、何でも食べる。
腹の中の両親と兄はそれを教えてくれた。

mae ato
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -