そのひととなり




レイヤーシティには四季があります。



はる。

レイヤーシティには風がふきます。つよい風もよわい風もふきます。
科学者のパーセプターは今年つくられたマグニフィカスをつれて研究所のおくじょうにきました。おくじょうではたくさんの風車が回っています。他のたてものの屋上をみても、あかやらきいろやらあおやらいろんな風車がくるくると回っています。
マグニフィカスがふしぎそうにしているのをパーセプターはみまもります。
「これはどうして回している?」
マグニフィカスがききました。
パーセプターはいいます。
「なつになれば分かるよ」

なつはまださきです。



なつ。

みんな、エネルゴンの圧縮でおおいそがしです。パーセプターはまだ新米のマグニフィカスにエネルゴンの圧縮機構を教えてあげるために、スカベンジャーのところへ行きます。
ぼう空シェルターのよこにあるガラスばりの空がみえる大きなたてものにスカベンジャーはいます。

スカベンジャーは機械のまえでむずかしいかおをしていました。でも、パーセプターが手をふって近づくと、スカベンジャーはわらって手をふりかえしました。マグニフィカスはそれをじっとみていました。

はるに、長いこと回っていた風車は青白い電気を作りました。きえたりあらわれたりをくりかえす光にマグニフィカスがさわろうと手をのばします。
「あぶないよ」
パーセプターに言われマグニフィカスは手を引っこめました。
スカベンジャーが大きな機械の小さなボタンを押しました。三人の目の前で青白い光がいくつも走ります。光は機械の中でぱたぱたとおられるようにして重なりました。それから、ひときわ強く光って、ピンクのしかくになりました。
スカベンジャーが二人にピンクのしかくを渡してくれました。
マグニフィカスがそれを受け取るのをパーセプターは見守ります。
「これはなぜ作る?」
マグニフィカスがききます。
パーセプターは言いました。
「あきになれば分かるよ」

あきはまださきです。



あき。

一年の内で一番風が弱い季節です。
パーセプターはマグニフィカスを連れて空港に行きました。
マグニフィカスには初めての空港です。パーセプターはなつに作ったピンク色の四角をたくさん持ってきました。
空港にはマグニフィカスやパーセプターが付けている紫色のエンブレムを付けていないトランスフォーマーもいます。青い目のトランスフォーマーも赤い目のトランスフォーマーも黄色い目のトランスフォーマーもいます。マグニフィカスが驚いていると、一人のトランスフォーマーがやって来ました。
トランスフォーマーはパーセプターに手を振っています。パーセプターも手を振っています。マグニフィカスも真似して手を振りました。すると、トランスフォーマーはマグニフィカスに気づいて、マグニフィカスにも手を振りました。

角張った身体をした大きなそのトランスフォーマーには右目がありません。マグニフィカスが見ているとトランスフォーマーは苦笑いをしました。
マグニフィカスは自己紹介をしました。トランスフォーマーは答えません。
パーセプターが言いました。
「スカージは戦争で声を失ったんだ」
マグニフィカスは納得しました。
パーセプターはスカージとしばらく筆談をして、ピンク色の四角を軍艦に載せることにしました。
パーセプターは四角を渡す変わりにたくさんの金属を手に入れました。

その後、スカージとまた手を振ってお別れをしました。
「これは何に使う?」
マグニフィカスが聞きます。
パーセプターは言います。
「ふゆになれば分かるよ」

ふゆはまださきです。



ふゆ。

レイヤーシティは冷え込みます。
パーセプターは風車を作ります。マグニフィカスもそれを手伝います。風車の材料は秋に手に入れた金属です。
二人は完成した風車を爆弾工場の隣に位置する建物に立てました。
爆弾工場には巨大な縦穴があいています。マグニフィカスはレイヤーシティの下を覗き込みます。
人が沢山います。歩いている人も笑っている人も話している人もいます。

吸い込まれそうなほど深い深い底にも人がいました。マグニフィカスはその底で上を向いている女の子を見つけました。黒くて小さいけれどがっちりした姿のその女の子は、マグニフィカスと目が合うと驚いた様な顔をしました。マグニフィカスも驚きました。
でも、すぐに手を振りました。
女の子はもっと驚いた顔をしましたが、女の子もおずおずと手を振り返してくれました。女の子の瞳は宝石みたいに真っ赤にきらめいていて、マグニフィカスは少しむず痒くなりました。

マグニフィカスの肩にパーセプターは手を優しく置きました。
「春になったら行ってみよう」
パーセプターの提案にマグニフィカスは頷きました。
マグニフィカスは顔を上げ作った風車を仰ぎました。
「これは動くだろうか」
マグニフィカスが言いました。
パーセプターは答えます。
「春になれば分かるよ」

はるはまださきです。








その年の冬、レイヤーシティは戦争で壊れてしまいました。


パーセプターもスカベンジャーもスカージもいません。
風車もガラス張りの建物も空港もありません。

マグニフィカスだけが残りました。

mae ato
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