そのひととなり

彼の事を話すならば、彼の産まれを話さねばならない。
彼の産まれは二つある。

サンストリーカーは一つのスパークから分離した二つのスパークの片割れである。彼の片割れ、つまり双子の兄弟は女性型のアラートである。
片割れが女性であったサンストリーカーは当然のように彼も女性型の同じ身体であると判断され、その身体を用意された。
しかし、それは間違いだった。
用意された身体とスパークは拒絶反応を起こし、彼は誕生と共に長いこと生死を彷徨った。緩衝液に浸された彼を見ながら科学者たちは頭を抱える。科学者たちは慎重に慎重を重ね彼の身体とスパークを同調させて行く。その間に女性型であった彼の身体はゆっくりと男性型に変わっていった。それから、ようやくサンストリーカーは世界に飛び出したのである。
双子の姉から遅れた双子の弟の誕生である。
これが、一つ目の産まれ。

生真面目な姉とは異なり彼は明るくジョーク好きな青年に成長していった。年の離れた双子は同じように軍人となったが、姉は戦闘を生業とし弟は通信士を天職とした。性格は異なる双子だが、双子はお互いに尊敬し仲良くやっていた。偶然に同じ艦のクルーとなった時は飛び上がって喜んだほどだった。

艦が地球に着いた時、サンストリーカーは姉の誕生記念が近い事に気づいた。サンストリーカーは彼女のためにプレゼントを用意するためにこっそりと艦を抜け出した。彼はとある鉱山跡地に向かい、宝石を見つけた。
サンストリーカーが宝石を見つけている頃に、鉱山跡地にはもう一人の人物が入り込んでいた。地球人の少年、サイモンである。彼は両親に叱られいじけて鉱山跡地で油を売っていたのである。
サイモンとサンストリーカーは本来ならばお互いの存在に気づかずにその場から立ち去るはずだった。
しかし、その時落盤事故が発生したのである。
大きな岩がサイモンの頭を砕き、サンストリーカーのブレインサーキットを打ちのめす。サイモンは己の命を永久になくし、サンストリーカーは己の記憶を永遠に失った。
サイモンの葬式が終わり、サンストリーカーが目を覚ます。
サンストリーカーのブレインサーキットには朧げに自分の名前と、2人の中年、2人の若者の顔が浮かんだ。
記憶を失ったサンストリーカーは予想外に大きく硬い身体を方々にぶつけながら4人を求めてノロノロと動き始めた。

これがもう一つの産まれの話だ。

サンストリーカーを語るには二つの事を知らなければならない。
一つは、彼の身体が妹でなく弟である事実。
もう一つは、彼の記憶がトランスフォーマーではなく地球人のそれである事実。


それから、もう一つだけ知っておくと良いかもしれない。
彼が名の通りに太陽の光の様な男であるという事を。

mae ato
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