地球へくるまで(中身)


今日のばんごはんは、ごちそうだ。
いつも通りにスプーンもフォークも2つずつ用意しようとすると、ママがもう2つスプーンとフォークを持ってきた。
「今日から4つ必要なのよ」
「どうして?」
「家族が増えるの」
ママが言ったのと同時にドアチャイムが鳴った。
「さぁ、来たからお迎えに行きましょ」
ママに手を引かれて、私は玄関へ行った。

玄関には知らないおじさんと男の子がいた。
ママから金髪の男の子を紹介される。
「ミア、これからあなたの兄弟になるレイよ」
私はママの手をぎゅっと握った。私とママの手の色は違う。ママは真っ白な手をしてるけど、私はチョコレート色の肌をしている。見たこともない死んじゃったパパと同じ色なんだってママは言ってた。
私はママみたいにまっすぐな髪じゃないし。でも、ママみたいに青い目をしてる。
金髪の男の子はミア達と違う緑色の目でじっとこっちを見ている。男の子の隣にはちょっとハゲたおじさんがいる。おデコが広くなってるけど、男の子そっくりの金髪だ。
男の子と私はしばらく見つめ合った。なんか、悪い奴じゃなさそうだと思った。
「さぁ、レイ。ミアと握手して」
おじさんが男の子に促す。ママが私の背中をポンと押した。ママは笑顔だ。
「ミアも握手よ」
ママがそう言ったから、私は男の子の方に片手を出した。
金髪の男の子は私が手を出したのに、私の手をじっと見ている。
「さぁ、レイ」
おじさんに言われて男の子は手を出してきた。手を出しながらも私をちらりとうかがった。
私が手を握ってひらくと、男の子は一瞬笑った。それから、分かりやすいくらいに嫌そうなからかうような顔をした。
私は、猛烈に頭にきた。
だから、握手しようとした手をばちんと叩いてやった。
男の子は驚いたみたいだ。ざまーみろだ。
「ミア、いじわるしないの!!」
ママが怒った。でも、ミアは悪くない。
ママの後ろに隠れてべっと舌を出してやった。レイもべっと舌を出す。

金髪のおじさんはミアのパパになるらしい。
ミアのパパはずっと前に死んじゃったんじゃないの?とママに聞くと、ママは新しいパパになるんだって言ってた。
パパって新しいのと古いのがあるみたい。すごい発見だ。
新しいパパは優しそうでちょっとさえないけど悪い人じゃないし、ミアも新しいパパは嫌いじゃないと思う。
新しいパパは、古いパパと違ってお家の設計図を作る仕事をしているらしい。古いパパは飛行機のパイロットだったっておじいちゃんが言ってたから、新しいパパの方がよく分かんない仕事をしているみたい。でも、パソコンのプログラマーのママよりわかりやすいお仕事だ。
とりあえず、私はママに一つだけ言っておいた。
「ママは古いママにならないで、ずっと一緒にいてね」
新しいパパとママは困った顔をする。男の子がこっちを睨んだ。
私はほっぺをふくらました。
「あんた、なんなの?」
私が怒って言うと、男の子はイーってしかめっ面をした。でも、何にも言わない。

四人で席に着いてご飯にすることにした。
男の子はテーブルを見て、ちょっとびっくりしたみたいだ。
「ママはお料理が得意なんだよ。美味しそうだろう?」
新しいパパはニコニコ笑う。私はふんと鼻をならした。そう、ママのお料理はとっってもおいしいの!!
「あら、今日はミアも手伝ってくれたからいつもよりずっとおいしいと思うわ」
男の子はこっちをちろっと見た。なんか、ムカつく。
「さっさと座ってよね!!」
私が怒鳴ると男の子はまたわざとイヤな顔をした。

イヤな顔をしながらも男の子はがつがつとご飯を食べる。私は呆気に取られてそれを見ていた。ママは新しいパパとお話しするのに夢中だし。男の子はばくばくがつがつご飯を食べるし。
「そんなに急いでご飯食べないでもなくならないよ?」
私が言うと男の子はピタリと動きを止めた。男の子はスプーンについたチーズクリームをペロリと舐めた。うわっ、下品。
「きみ、いらないの?」
「は?」
「いらないんなら、もらってやるよ」
男の子はそう言うのと同時に、チーズクリームのかかった私のお魚にフォークを突き刺した。私の大好物のお魚は男の子の口の中にあっという間に消えてしまう。
「取っておいたのに」
「トロいのがいけないんだよ。おいしーーっ」
男の子は、レイは、私のお魚をくちゃくちゃと音をたてながら噛みしめる。私は悔しくなって涙が出てきた。
「ママ!!レイがお魚とった!!こんな奴、キョーダイじゃない!!」
私が怒ると新しいパパは慌ててレイに返すように言ったが、ママは笑うだけだ。
「なんだ、仲良くできそうね」
ママはひどい。レイなんかと仲良くなんてできるわけがないじゃないっ!!

お魚抜きの晩御飯が終わると、ママと新しいパパはお話があるからって私達はこれまで使ったことのないお部屋に入れられた。
「ここをあなたちの部屋にしようと思うのよ。ほら、2段ベッドも買ったの」
ママはそう言って私に大きなクマちゃんを投げた。レイには大きな怪獣だ。
新しいパパはにっこり笑った。広いおデコに光が反射して眩しい。
「2人とも仲良くするんだよ」
私達はうなづいた。ママと新しいパパが階段を降りて下の部屋へ行く。
レイと私は顔を見合わせた。それから、2段ベッドの上を見た。
私はすぐさまクマちゃんを上に投げ入れた。
「私が上!!」
「ズルい!ぼくが上っ!!」
レイは二段ベッドのはしごをさっと上がってクマちゃんを投げ出した。
「ずるいー!」
「じゃあ、じゃんけんしよ」
じゃんけんしたら負けた。ムッとしたけど、仕方ないから我慢。
勝ったレイはすぐに寝ようと言い出した。私も一階だけど二段ベッドが楽しみだから、すぐに横になった。
でも、なかなか寝れない。
寝ようとしてると、ママとパパの笑い声が聞こえた。二段ベッドがぎしりと音を立てた。レイもまだ起きている。
「私、今日が一番おもしろかったわ」
「どうして?」
「ママ以外の人とはじめてケンカしたもん」
2段ベッドの2階が少しだけ音を立てた。ベッドからは新品のにおいがしている。まくらに顔を押しつけると、そのにおいはもっと強くなった。
「ぼくもそうかも」
レイはちょっと黙ってたけど、また話しかけてきた。今度はちょっと申し訳なさそう。
「ねぇ、ミアはどうしてママと…んんっ、なんでもないや」
「ミアはミアのパパと同じ肌の色だからだよ」
ごそごそ音がして、レイが2段ベッドの上から顔を出した。怪獣も顔を出している。
「スゴイね!ぼくの言うことどうして分かったの?」
レイはとっても嬉しそうだ。
「やっぱりぼくたちキョーダイだからかな」
私はちょっと変に思った。いつも聞かれてことだから、そんなのすぐ分かるに決まっている。
でも、レイは本当に喜んでいる。レイの隣の怪獣も横にフワンフワンと揺れている。私はクマちゃんにしがみついた。
「そうだと思うよ」
私は少し嘘をついた。レイは興奮気味に言った。
「ぼくたち、きっといいキョーダイになれるね!」
「そうかも」
今度は、嘘じゃない。
なんか、すっごくドキドキしてきて、私は目をぎゅっとつぶった。それといっしょにねむくもなった。
レイのあくびが聞こえる。
「ねむくなっちゃった。おやすみ、ミア」
「うん、おやすみ。レイ」

ーーーー


ねぇ、これが、4人家族になった1日目のお話。

1年前のお話なの。
で、今日からは5人家族になる準備を始めるよってパパが言ってた。

私もレイもびっくり。ママのお腹の中に赤ちゃんがいるんだって。赤ちゃんは男の子でサイモンって名前になるみたい。

パパはみんなのためにお家をせっけーするって言ってた。二段ベッドも持っていく。パパが三段ベッド…ってぼやいていた。レイったら、そしたらやっぱりぼくが一番上だからね言うんだから!

わたしたち、きっといいキョーダイになれるよ。

みんな、あなたを待ってるよ。

mae ato
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