地球へくるまで


天然のスパークから産まれないトランスフォーマー、つまり人工スパーク持ちの10人に1人以上は双子だ。おおかた20人のうちに双子は最低一組いるはずだ。だから、双子のトランスフォーマーは珍しくない。
双子のトランスフォーマーは助け合ったり、憎み合ったり、それはその二人それぞれの関係を持っているけれど、二人の間にはたまに不思議な力が生まれることがある。

それは、相乗的な力を得る合体だったりもする。
それは、銀河すら越えるテレパシーだったりもする。
それは、何千回と何万回とリフォーマットされても消えない記憶だったりもする。




「あっちから声がする。」
第3戦艦タイタニアに搭乗してすぐ様、ブリッツウィングはその方向をまっすぐに指差した。その場に居合わせたオクトーン、オンスロートはブリッツウィングの示す方向を見たが、目前にあるのは変哲も無いただの壁である。
オンスロートは苦虫を潰したような顔をしてため息をついた。
「壁じゃないか」
「Spinnst du?」
ブリッツウィングが自分の額に手を当てながらオンスロートに言ったが、オンスロートは意味がわからずに首をかしげるばかりだ。サイバトロン時代に言語学をかじったオクトーンは、ブリッツウィングが『イカレヤロウ』とオンスロートに言っているのは分かったがスルーした。
オンスロートが元々厳つい顔をさらに険しくしていると、ブリッツウィングは肩を竦めた。
「アンタ、歳で耳が遠いんじゃない?」
「は?何だと?」
オンスロートが若干身を乗り出すと、ブリッツウィングはそれを嫌な笑みを浮かべて見つめた。
ブリッツウィングの肩からのびる黒いインテークがギラリと黒光りする。
「参謀に副官が楯突くの?へんなの」
話にしか聞いたことがないが、ブリッツウィングのインテークは四方八方の物体を破壊し尽くす衝撃波を出すらしい。そのインテークは確かにオンスロートの方を向いている。
オンスロートの指がぎゅっと握りしめられた。オンスロートは唾気を飲み込んでから、深く息をついた。
「失礼しました、参謀閣下」
「Schaf, 初めから分かれよ」
オクトーンが横目でチラリとオンスロートを伺うと、オンスロートは腕を戦慄かせていた。
「了解です、クソガキ」
「クソガキ?クソガキってなに?」
「褒め言葉ですよ、参謀閣下」
「ふーん、そうなんだ。オレ、お前に褒められたの初めて!!」
オンスロートは顔色を全く変えずに空陸参謀を見下ろした。
「なんで褒めたの?なんで?なんで?」
「……歳をとると色々あるんでさぁ」
「なるほど!」
ブリッツウィングはけたたましくはしゃぎ回る。オクトーンは再びオンスロートをうかがった。今度はオンスロートの指が小刻みに崩れたリズムを叩いてた。
参謀が無知であることに、動揺している。その動揺が同情か怒りかは分からない。
ただ分かることは、一つ。
これだから、オンスロートは副官どまりなのだ。

空陸参謀は無邪気にあらゆるものにちょっかいを出している。
オクトーンはブリッツウィングが先ほど指差した壁を一瞥し、すぐに自分の足元に視線をやった。

気のせいだ。第一、『アイツ』が目覚めることなんて、ない。それに、『アイツ』とこのガキが顔を合わせることなんてこれまで一度きりとできなかったはずだ。

黙り込んだオンスロートを放置し、ブリッツウィングに言葉をかけた。
「空陸参謀殿、そろそろ会議の時刻です。参りましょう」
「あぁ、うん!……バイバイ」
壁に向かってブリッツウィングが手を振る。オクトーンの背筋がぞわりと凍る。

そちらは間違いなく。
『アイツ』、ナイトバードのブレインがある方だ。






ねぇ、わかるよ。
君がいることが。

だって、僕らは双子のきょうだい。

mae ato
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