ホリデーシーズンだからかドリンクやスイーツの屋台がちらほら出ていて、私はその中からあたたかい飲み物をふたつ購入し、アキラくんの待つベンチに戻る。
そこには、ベンチに腰掛けて俯くアキラくんがいた。すこし気持ちが落ち着けば良いなと席を外したつもりだったのだけれど、案の定苛立っている様子は無い。もう大丈夫そうかな。
はい、と湯気の立つ紙カップを手渡して、彼の隣に腰掛ける。さっきまでは気付かなかったけど、ベンチの向こう側にはイルミネーションが広がっていた。クリスマスの輝きが、ホットドリンクの湯気に揺れる。
「……すまない。せっかくの、キミとのデートだったのに、空気を悪くしてしまって……」
アキラくんは申し訳なさそうに視線を落としている。どこかのスピーカーから聞こえる流行りのクリスマスソングと、イルミネーションの輝きが、そんなアキラくんを切なく照らした。
私は、胸に決めていた事を伝えようと、小さく深呼吸する。
「全然、そんなことない。……あのね、今日はいろんなアキラくんが見れて嬉しかったよ」
「そう言ってもらえると…救われるけれど。正直、格好悪い所ばかり見せてしまった気がする」
「ううん。全部、好きだよ」
「……え?」
私が相手の気持ちを知っていても尚こんなに緊張するのだから、この間アキラくんが告白してくれた時は一体、どれ程の想いで言ってくれたのだろうか。
「アキラくんが気持ちを打ち明けてくれてから……色々考えてみたのだけど。アキラくんのこと、ひとりの男の子として、考えてみたのだけど。私、アキラくんの全てが好き」
アキラくんはまるで用意が出来ていなかったかのように硬直してる。こうなる事を望んで告白してくれたんじゃないのかしら。かわいくてつい、頬が緩む。
「釣り合うように努力するので…私を恋人にしてくれますか?」
「あ、えと、ハイ……」
「ふふ。もう、アキラくんちゃんと聞いてる?その『ハイ』はイエスと受け取って良いの?」
「す、すまないーーー頭がついていかなくて」
アキラくんは照れ臭そうに口元を隠した。そして一度、ゆっくりと瞬きをして、私を見つめた。真っ直ぐな眼差しで。
「努力するのは、ボクの方だよ。ありがとう。なまえーーー幸せにするから」