- ナノ -

天使 3


時間はまだそこまで遅くないはずなのに、学校に着くと他の人の気配が無かった。
・・・あれ?放課後って、いつもこんなに静かだっけ?
他の部活の人たちの姿も見えないし・・・もしかしてオレたち以外の部もミーティングだけだったのかな?それとも、雪で中止に・・・って、さすがにそれは無いかな?

あ、そうだ。だとしたら、グラウンドを通って部室のある校舎練へ行けるんじゃないか?
ホントはその方が近道なんだけど、いつもはサッカー部や陸上部が使ってるから横切る事はできない。
でも、グラウンド使ってないなら良いよね。
やった、今日はツイてる。近道できるし、雪も見れた!


オレはロードを押して、グラウンドのある方へと歩みを進める。
ふわふわと降る雪は止む気配が無かったけど、さすがに積もる程でも無いみたいで、降ったそばからどんどん溶けていって道はべしょべしょだった。
うわー、あとでホイールのメンテナンスしてあげなきゃだなぁ。

そうして校舎脇の通路を進み、グラウンドへと出た。歩きながら、やっぱりオレはいつものクセで彼女の教室の窓を見上げてしまう。
っていうか居るはずもないんだけど、もはや条件反射だ。さっきカバン持ってコート着て、玄関の前で会ったんだから、もうとっくに帰ってるはずだもの。




−−−だけど、居たんだ。



ふわりふわりと舞う天使の羽根のむこうに、彼女の姿があった。

オレは、自分の目を疑ったけど・・・でも、彼女の事を見間違うわけもなくて。

どうしてだかは全くわからないけど、彼女は教室の窓からそっと外を眺めてる。






−−−オレは気付くと、ルックを置いて走り出してた。


なんで彼女があそこにいるんだろうとか、だいじなロードバイクがホイールだけじゃなくてフレームまで汚れてしまうかもとか、−−−そんな事は何も考えられないまま。夢中で、雪に濡れた地面を蹴った。





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