「・・・さ、さんがく?」
「もう、ダメ。名前さん可愛いすぎ」
そう言うと山岳は、有無を言わせない強引さでキスを落とした。私はやっとの思いでしたっていうのに。
「プレゼントがキスだけなんて申し訳ない、ってさっき言ってたよね?だから今日は、もうちょっとだけ、名前さんの事感じたい。・・・だめ、かな?」
こんなに余裕の無い山岳を初めて見たかもしれない。
いつもほわほわと、マイペースな彼。
山の話をするときの、楽しそうな笑顔。
ロードに乗るときの、真剣な眼差し。・・・山岳と出会って、限られた月日とはいえ、私はその中でも色々な表情を知っているはずだった。
でも、こんな彼は、はじめて。
ヤバイかも、これ以上は−−−
そう、頭ではわかっているのに、私は全く抵抗できなくて。
頭も心も、山岳がいっぱいで。なのに、もっともっと満たされたいと求めてしまっていた。
「・・・そんな顔されたら、ダメって言われてもやめられなくなる・・・ホント、名前さんはずるいよ。・・・もう、決めた。今日のオレ、止めらんないからね」
そう言うと山岳は、私の手首をそれぞれ両手で押さえる。抵抗しないようにしたつもりかもしれないけど、たぶんそれは意味が無い。・・・だって私はもう、いっぱいいっぱいだから。
頭がぼうっとして、心臓は張り裂けそうなくらいに大きく脈打ってる。
抵抗なんてやっぱり、できそうもない。
・・・当たり前だ。
大好きな人に、こんな風に触られて・・・余裕なんて、あるわけない。
私は、またさっきの深いキスが来るのかもと思わず身構えた。
そんな私を見て、彼は目を細めて呟く。
「名前さん、顔が真っ赤だよ。ほら、こんなトコまで赤い」
ちゅ、と耳に口付けをされる。
初めての感覚に私は、ビクリと身体を揺らしてしまう。
−−−やっぱり、駄目だ。
私が、しっかりしなきゃ。
「だ、駄目!」
そう言って私は、力いっぱい山岳を押しのける。