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快楽主義 2


兄や荒北さんが帰って行って、山岳と二人きりになった直後。
部室の机に向かって、よし早速とりかかろう!と意気込む私の横に、山岳がにこにこして椅子を並べた。気になりつつも、時間も無いので構わずノートを開く。

隼人さんのメニューについては、既存のものもなかなかにハードで流石強豪校のレギュラーメンバーという感じだ。でも、もうちょっといじれそう。考えていたらワクワクしてきて、そのイメージを今日中にまとめてしまいたかったのだ。もしかしたら意外と、マネジメント側も向いてたりするのかな。
ノートにペンを走らせていると、彼の頭が肩にもたれ掛かって来た。

「ちょっと…そんなくっついてたら、書きにくいんだけど」
「なに書いてるの?」
「隼人さんのメニュー」
「えー。オレのは?」
「山岳のは、まだ考えてない。もし個別に考えるとしたら、来月にレギュラーメンバーを決めるレースやるんでしょ?そこで選ばれたらかな?」
「ふーん。そっかぁ」

そう言うと山岳は、明らかにヒマそうに私の手元をただただじっと見ている。うう、やりにくい。

「山岳も、なんかやる事ないの?ホラ、授業の課題とか無い?」
「ねぇ名前さん。ちゅーしたい」


来ると思った…。
最近の山岳は、いっつもこんな調子だった。

あの日・・・
追試試験の日。
山岳が告白してくれて、私たちは晴れて彼氏と彼女になった。
彼氏ができたのなんて、生まれて初めてで。
山岳が、私の彼氏…なんて、心の中で呟くだけで、きゅんと胸が詰まるような思いだった。

付き合う前から薄々感じてはいたけど、山岳の愛情表現は気まぐれかつ超ストレートだった。
まぁ確かに、学校来ないで山に登ったりしてたわけだから、結構な快楽主義なのは想像がついたけど。

例えば、校内だったら人の少ない廊下に連れて行かれキスされたりとか、昼休みは屋上だったりとか、だというのに放課後はメールすら返さない…といった彼のマイペースぶりに、私は相変わらず振り回される毎日だった。

まさか今日残ってくれたのも、その為じゃないよね?私はペンを持つ手を止め、山岳を横目でじろりと見る。目が合うと、にこりと爽やかな笑顔で微笑まれた。可愛い顔して、こいつは本当に手ごわい。




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