- ナノ -




"追試おわりました!校門に集合です( ´ ▽ ` )ノ"


その日の放課後、私は昨日と同じように教室で山岳をそわそわしながら待っていた。

待ち合わせの内容も昨日と同じ。山岳は追試が終わり次第、いつも勉強会をしていたこの教室に来て、今度こそ一緒に自己採点をしようという事だった。−−−そのはず。

が、しかし。
携帯が鳴って、私は飛びつくようにメールを開く。すると、その内容はなぜだか校門に集合という内容だった。
え?な、なんで?
いつの間にそんな約束になってたの?
自己採点は・・・?

私は戸惑いながらも、もしかしたらまた何か事件だった時の事を考えて、荷物をカバンにまとめて足早に教室を後にした。




「あ、名前さん。おつかれさまでーす」

不安に背中を押されながら校門に到着した私を、山岳はのんきにアホ毛をぴょこぴょこさせながら手を振って迎える。良かった、トラブルがあったわけでは無いみたい...?
というかそれよりも、その格好は一体・・・!?

「…な、なんでサイクルジャージ…ってか山岳、追試はどうなったの!?」

彼は何故だか、やる気満々のサイクルジャージ姿で、両脇にロードバイクを2台携えている。…何これ、嫌な予感しかしないんだけど。

「終わりましたよー。メールにも、そう書いたじゃないですか〜」
「け、結果は!?っていうか、いつ着替えてロード持って来たの?そんなに早く試験が終わるわけ・ …」
「ヨユーでした。すぐ終わったんで、その後着替えたんです」

ほ、ほんとにぃ・・・?!
信じられない私をよそに、山岳はさわやかな笑顔を浮かべている。本当、こいつには振り回されてばっかりだ。

それにしても…。彼のサイクルジャージ姿を見たのは、初めての事だった。
胸に"箱根学園"と大きく書かれた、ブルーを基調にしたジャージ。兄が着ている所や、兄のレースを応援に行った時に選手達が着ている所を目にした事は何度もあったけど。こうして彼が着ている所を見ると、山岳ってやっぱり…

「あれ、真波君じゃない?!」
「ホントだー。やっぱり、超かっこいいね。ユニフォームかな?」

下校時間の校門、しかも大人気の王子様が部活姿で居るという事で、かなり周囲の目を集めてる。女子生徒達の黄色い声がそちこちから聞こえ始めた。

「さ、名前さん。そろそろ行きましょうか」
「…一応聞くね。どこに?」
「もちろん、山です!」

行きましょう!と、きらっきらの笑顔で体育用ジャージのハーフパンツを手渡される。これを、スカートの下に履けって事ね。
ネーム欄を見ると、そこには"マナミ"と書いてあった。おおっ。今回はちゃんと、自分の貸してくれるんだ!…って私よ、そんな事に感動しててどうする…。




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