- ナノ -

消えた王子様 3


次に辿り着いのは生徒玄関だった。ハァハァと身体全体で息をしながら、一年生の靴箱を目指す。こんなに走ったのはいつぶりだろう。山岳のヤツ、どんな理由であれ見つけたらタダじゃおかないんだから!

彼のクラスの靴箱に近付いた時、物音がした。
下校時間は過ぎていて校舎内は部活以外の生徒はほとんど帰ったようだったから、私は期待感いっぱいで足を進める。そして、そこにいたのは・・・。


「・・・宮原さん!」


山岳の幼馴染、クラス委員長の宮原さんの姿だった。

「名前先輩・・・!び、びっくりした・・・どうしたんですか?そんなに慌てて」
「山岳、知らない!?」
「さぁ・・・今日は朝から、学校に来ていなかったので」


え・・・?

私はてっきり、追試にだけ行けていないものだと思って、校内を探しまわっていた。
でも、学校にも来ていなかったの・・・!?

「えっ・・・体調不良とか・・・?」
「さぁ?無断欠席はいつもの事なので・・・。ここの所は無かったですけど、山岳はしょっちゅう、こんな感じでしたから。来たり来なかったり、気分次第で」
「そんな!だって今日は追試試験の日なのに」
「えっ、今日だったんですか?山岳、あんなに勉強してて・・・それに、名前先輩も毎日みてくださっていたのに・・・。まぁでも、仕方無いのかもしれません。山岳の事だから、きっとまた山が呼んでるとか言って、自転車でフラフラしているんじゃ・・・」
「絶対、そんなわけないよ!」

つい大きな声が出て、宮原さんが驚いて身を硬くしてしまっている。感情的になってゴメン、と心の中で謝りながらも、でもこのタイミングで彼女に会えた幸運に感謝した。

「ねぇ宮原さん、山岳の自宅の電話番号知らない?絶対なにか事情があるはずなの。でも、さっきから携帯が繋がらなくて・・・」
「ああ、それなら知ってます」
「良かった!電話かけてもらっても良いかな?」
「ハイ、もちろん!あぁでも私、携帯電話は学校に持って来ていないんです、校則違反なので」
「真面目かっ!」
「さすがに番号を覚えてはいないので、一度自宅に帰ってからでも良いでしょうか?」

ついツッコミを入れてしまったが、挫けずに次なる一手を探す。諦めたくない。

「もしかして、山岳の家の場所わかる?!」
「もちろん、私の家の隣ですから」

よし、行こ!!
私は宮原さんの手をとって、再び駆け出した。




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