マダラとの再会


=砂丘エリア=

「……マダラ」
「久しぶりだな、サキ。迎えに来た……と言いたいところだが、お前は分身だな」

今のサキを見て直ぐに分身であることを見破られた。そして途端に目の色を変え、冷たい視線が分身のサキに刺さる。

見間違う事はない。あの写輪眼、前世の自分を幻術に陥れ、全てを奪っていった瞳だ。

「サキ?」

(嫌だ、怖がるな)

カカシのおかげで写輪眼のトラウマは克服した。それでも冷や汗が流れ、幻術にかかっているわけでもないのにマダラから目が離せない。本物のマダラだと自覚して震えが止まらなかった。

「サキ!!」

バシンと背中に痛みが走った。
隣にいたナルトが思いっきり背を叩いたのだった。

「ごめん……久しぶりに会ったらから、動転した」
「奴と戦えるのか?」

前世の話を聞いている我愛羅もサキを心配する。
サキはここまで来て情けない、と自分の頬を引っ叩いた。

「うん。戦える」

マダラをしっかり見つめ、深呼吸を繰り返す。
いつも通りに戦えば大丈夫だと。


「ワシらはマダラをやる。あの無様は分裂体、あの姿じゃ塵遁はもう使えん!お前たちで封印しろ」

オオノキは雲隠れのドダイを中心に指示を出した。
マダラの戦闘に巻き込まれないよう無は大岩より後方に逃れ、指示された部隊がそれを追う。

無を通して穢土転生の術者、薬師カブトにうちはの伝説の力を見せてくれと煽られたマダラは久方ぶりの戦闘に心躍らせその煽りに乗ってやることにした。

「火遁・豪火滅却!」

マダラの放った術は範囲が広く何十人の水遁によりようやく鎮火できるレベルだった。沸騰した水が湯気を出し、そこにマダラが突っ込んできた。
術もさることながら、写輪眼との組合せによる体術で第四部隊はどんどん蹴散らされていく。
サキは味方の叫び声が響く場所に飛び込んで、至近距離で尾獣玉を喰らわせようとした。

だがそれが写輪眼で見えていたマダラは須佐能乎を纏って攻撃をいなしただけでなく、地面を割り何人もの忍を負傷させた。
サキも例外でなく衝撃で吹き飛び、その身体を我愛羅の砂が掴んでくれた。

「ありがとう」
「一人で無茶をするな。まだか、ナルト!」

我愛羅の横でナルトは自然チャクラを集めていた。次第に瞼が赤く染まり、準備ができたとナルトが言う。

オオノキ、我愛羅、サキは目を合わせ、ナルトのフィニッシュブローが決まるよう連携攻撃を仕掛けた。
そして仙人モードの螺旋手裏剣がマダラに直撃した。

やったかと期待するも、螺旋手裏剣はマダラに当たった瞬間に小さくなっていった。マダラの眼は万華鏡写輪眼から輪廻眼へと変わっていて、術を吸収してしまったのだ。

「何でマダラが輪廻眼を」

「多すぎるな……」

大岩に移ったマダラは印を結んだ。

間もなくして上空より轟音が近づいてきた。
皆上を見上げその正体に驚愕する。
それは巨大な隕石だった――

「何だよコレ」
「じ……次元が、違う」
「神の力か……」

自身が穢土転生の体であることを最大限利用した戦法。これが直撃すればこの部隊は壊滅してしまう。
あまりの力の差を前に諦めが伝染しかけるが、オオノキがそれを止めた。

「まだ諦めの言葉を口にするな!何もせんうちから己を捨てるな!少しでもやれることをするんじゃぜ!」
「皆、出来る限りこの場から離れろ!」

我愛羅も隊長として皆に指示を出す。長門がしていた引力と斥力の応用だろう。まさか隕石を落とすなんて――

オオノキは土遁・超軽重岩の術で隕石を軽くし、サキと我愛羅で砂丘の砂を持ち上げてオオノキを援護した。
そしてギリギリのところで止まった隕石に皆湧いたが、マダラの絶望的な言葉により状況は一変した。

「二個目はどうする」

二個目の隕石が一個目の隕石の上からのしかかった。
それがオオノキの頭蓋にヒットし、超軽重岩の術が解かれる。
急に質量を取り戻した隕石は第四部隊を壊滅させるのに十分すぎた。


***


衝撃から己の身を守れたのはほんの一握りだった。多くの生体反応が消えている。サキは歯を食いしばりながら立ち上がり生きている負傷者を探した。

一番近くにオオノキがいる。生きているのが奇跡と言えるほどの重傷だ。
サキはすぐにオオノキの隣に座り、残り少ない自然チャクラで回復を行った。
敵からの追撃は今のところない。
その間にも次の手を考えなければいけなかった。


(そろそろ分身が切れる……どうする、本体を口寄せするか)

(ううん、ダメだ。向こうの仮面の男が外道魔像を持ってるのは明らか。尾獣を助けるために本体は動かせない)

その時砂埃の中からナルトが走ってきた。

「サキ!土影のじいちゃんは!?」
「大丈夫、生きてる。ナルト、チャクラあとどの位残ってる?」
「九尾チャクラモードはもうなれねえ。俺のチャクラももう殆ど残ってないってばよ」

相手は不死身の伝説の忍。対してこちらで動ける者は十人もいない。

砂埃が晴れてきた頃、大岩の上で高みの見物をしているマダラは確認したいことがあると言って口寄せを行った。対象は九尾だ。
だがナルトに封印されているため九尾は出てこない。

「九尾はまだ捕らえていないようだな」

人柱力であるナルトは突如として封印式に干渉してくる力により苦しみ出した。


「ほら、あの少年が九尾の人柱力のうずまきナルトくんですよ」
「うずまき……ミトの一族か」
「彼は分身です。さっさと本体を取りに行きますか?」
「いや、試したい術がある。何もない所でやるよりも人がいた方が絵になるだろう」

マダラは追い討ちをかけるように木遁・樹界降誕を発動した。視界いっぱいに木が迫ってくる。
でも、これだけの範囲攻撃を防ぐだけのチャクラはもうなかった。

(どうする、どうしたら……)




『ナルト、今回だけ力を貸してやる』

ナルトの中から九尾が言った。
目の前にいる敵は生前九尾を操り、サキを殺した人物だ。マダラに操られるくらいならお前の方がマシだと言って、九尾はナルトにこの場を凌げるだけのチャクラを渡した。

ナルトは単身樹界に突っ込み多重影分身で帯状に広がった。そして個々に大玉螺旋丸を放ち、木々を粉砕していく。

「九尾が、ナルトに……」
『気まぐれだ。もう手はかさん』

感動している所に九尾は釘を刺した。サキは目を熱くしながら笑った。

『ありがとう、九喇嘛』

そうだ、やれることをやり切るしかない。
サキは他の戦地に送った分身を全て口寄せした。

「何だ、全て分身じゃないか」

雑魚を集めてもしょうがないと言ったようにマダラは呆れている。
そんなのを気にしないで、サキはマダラの横に立っている無の分裂体を見た。
普通の影分身ではなし得ない、術の後付け改変による合体。自然チャクラを混ぜ合わせ、一つの体に戻していく。
本体に戻らないように針の穴に糸を通すようなコントロールで――

雑魚の集合体と言えど、前世振りに見るサキの説明できない力を前にマダラは口角を上げた。

「やはりその力はお前が持っていても宝の持ち腐れだな」

ようやく一つになった体でマダラに迫ろうとした時だった。マダラは視界から消え、感知した時にはサキは吹き飛ばされていた。

(早すぎる……)

そして後方の大岩に当たり、血を吐いた。
ザッザッと砂を踏み締める音が聞こえ、顔を上げるとマダラが既に追いついて来ていた。

「お前は言ったな。オレには無理だと」

「オレは輪廻眼を開眼させたぞ」


マダラが言わんとしていることは分かる。過去に言った言葉を一言一句覚えている。何をされたか痛みまで鮮明に――

『魔像は、、私の身体に埋まってる封印石の中。石を取り出しても輪廻眼がないと口寄せできない』
『輪廻眼だと……』
『だからッ……貴方には無理だ。口寄せできない。私にだって、もう誰にも。十尾は復活できない!』


今のマダラには十尾復活に必要な条件が揃っている。
あとは八尾と九尾、サキを魔像に収めるだけだ。

「……このッ」

マダラの後方に尾獣玉を生成したが須佐能乎によりまたも防がれた。

「すぐに迎えに行ってやる」


***

***


仮面の男を追うサキ本体に分身の記憶と経験値が入ってきた。分身のサキを倒したマダラの顔はあの時と同じ、憎しみに染まった顔だった。

今すぐマダラの元へ行きたいところだが、分身のサキが考えていたように外道魔像を持っている仮面の男優先だ。
サキは残った仲間を信じ、目の前の敵を見据えた。


しばらく経たないうちに砂丘エリアにいたナルトの分身も返ってきた。
向こうは火影、雷影、水影が増援にきたから大丈夫だ。そして現五影の名に賭けて本物のマダラを倒す、だから向こうのマダラはお前たちが倒せと言付かってきたと、ナルトはサキに伝えた。


そうして三人の前方から穢土転生された人柱力を率いる仮面の男が現れた。

戦いはいよいよ最終局面へと突入していく――



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