里の外へ


ナルトがアカデミーに入学してニ年が経った。
新入生の時よりも実践的な授業が増え、失敗も多いが学校自体は楽しく過ごしている。座学は相変わらず嫌いでよくサボっては担任のイルカ先生に怒られているけれど。

今日は手裏剣の授業があって、珍しく的の真ん中に当たったから気分がいい様子。早くこのことを伝えたいと、ナルトは学校が終わるとすぐに走って公園に向かった。


=木ノ葉の里 公園=

「おーい!サキ!!」

ベンチに腰掛けていた少女の灰色がかった紺色の髪が揺れた。少女はナルトの声に反応して立ち上がり、右手を頭の上に挙げてこっちこっちと左右に振る。
ナルトはそれに応えるようにして地面を蹴り急ぎ、そして彼女の前で勢いよく止まった。足元の砂利がザザッと音を立てる。

「お疲れ様。今日のアカデミーどうだった?」
「今日俺ってば、手裏剣を的の真ん中に当てたんだってばよ!凄いだろ!」
「凄い!初めてじゃない?真ん中って」
「今日コツを掴んだからな。明日からはサスケにも負けないくらいの命中率で、クラスで一番になってやるってばよ」
「うん、応援してるね」


サキは数ヶ月前この里に来た女の子だ。
里の出入り口、里名物の"あん"と書かれた大きな門の前に横たわっていたところを門番が見つけたらしい。要するに彼女は捨て子だった。

さらに不運なことに捨てられる前どうしていたか記憶がなく、出身も両親も分からない状態だった。唯一分かったのはサキという名前と八歳ということだけ。身包みに縫い付けられた手紙に"サキ。八歳。育ててください"と書かれていた。

分かっていることはその程度。通常であればそんな子供を里が預かる謂れはない。だがこのご時世大きな戦争はなく木ノ葉の里が比較的安定していたこと、三代目の慈悲の精神も相まって、サキはその手紙の要求通り里が預かることとなったのだった。

ナルトは里の人間から嫌われておりひとりぼっち、サキも捨て子ということで周りから嫌厭されていた。ひとりぼっち同士、知り合ってしまえば仲良くなる事は容易い。

そんなわけで知り合って三ヶ月、サキとナルトは互いに唯一の友達として絆を深めていた。


「あーあ、私もアカデミー入りたいな」
「また先生にお願いしてみるってばよ」
「ありがとう。ナルトと同じクラスになれたら楽しそうだよね。あ、そうだ。私も今日とっておきのニュースがあるの。あのね、里の外に出てみない?」
「里の外?オレたちだけで外に出られるのか?デカい門には見張りがいるってばよ」
「うん。だから門じゃなくてね、別の道。昔忍者が使ってた抜け穴を見つけたの。まだ塞がってないし、見張りもいない」
「シシシ。面白そうじゃん。行くってばよ!」
「やった!じゃあ今日行こうよ。少し暗くなってからのが見つかりにくいかも」


***


木ノ葉の裏通り、居酒屋が立ち並ぶ通りを抜けて。
辺りが暗くなってから訪れたそこは、人気も無く静かな緑地だった。

「こんなところにあるのか?」
「うん。この垣根を退けると」
「おお!板だ。早く退けようぜ」

サキが地面に覆いかぶさっている薄い板を退けると、大人一人通れそうな穴が出てきた。

「暗、、」
「大丈夫。駄菓子屋で光る札買ってきたから」

カバンの中から"照"と書かれた短冊を取り出し、その端を千切ると紙が発光した。忍道具の一種だが、子供に人気の玩具として駄菓子屋で買えるのだ。

「ナルトの分ね。昨日事前に通り抜けられることを確認したから安心して。行こう」

先に真っ暗な穴に入りナルトを誘う。ゴクリと生唾を飲んでナルトもサキの後ろに続いた。半信半疑なナルトとは違いサキはズカズカと進んでいく。

子供の自分達が腰を曲げてスレスレで歩けるくらいの小さな穴。サキがこの穴を見つけたのは今からニ週間も前のことだ。

そしてナルトには隠れて何度もシミュレーションをして安全なこと、人に知られないことを確認していた。だからこその自信満々の姿なのだ。

「なんか今日のサキ、めちゃくちゃ頼もしいってばよ」
「ふふん。まあ任せてよ。そろそろ外に出られるから」


今日、サキにはどうしてもやりたいことがあった。
穴を見つけた時から機会を窺っていた。


うずまきナルトの中にいる九尾の封印を解くこと。


「もう少し…」


出口の板が視界に入るとサキは呟いた。



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