賭けの行方


=荒野=

ナルトの視界にはカブトに容赦なく蹴られ、殴られる綱手が映る。
大蛇からのダメージに耐えながら、ナルトはカブトと綱手の間に入り綱手を庇った。

「いい加減にしやがれ!」

ナルトは未完成の螺旋丸でカブトに反撃を試みた。
しかしモーションが大きく、カブトは危なげなく避け、さらにナルトの横を通る際にチャクラ解剖刀で左足の筋肉を断ち切った。

(だめだってば、動く相手じゃ簡単に当たんねえ)

(そうだ……サキの術)

ナルトはサキを見るが、サキは地面を這っており、とても術を頼める状況じゃない。どうする、どうすると考えていると、カブトが冷徹な笑みを浮かべながら話しかけてくる。


「……クク、僕が怖いかい?ここから逃げ出したいかい?」

「ナルトくん、君は中忍第一試験の時にこうはしゃいでいたね」

『舐めんじゃねえ!!俺は逃げねーぞ!!
受けてやる!もし一生下忍になったって、意地でも火影になるから別にいいってばよ!!怖くなんかねーぞ!』

「もうはしゃぐのはやめた方がいいね。状況次第で諦めて逃げたい時には逃げたらいい」


バカにするカブトを睨みつけると、更にカブトは言葉を続け、体を支えきれていないナルトに連続で蹴りを入れていく。

「なに?その目。死ぬんだよ?死んだら夢も何もないんだから」

綱手が以前ナルトに言ったことと同じだ。
夢見がちなガキが火影になるだのと戯言を言うのだと。
綱手は一週間前のナルトを思い返しながら、カブトとナルトの戦いを見つめる。

「まっすぐ……自分の言葉は曲げねえ」

蹴り続けられたナルトはゆっくりと立ち上がる。

「それが俺の忍道だ……」

ナルトは何度カブトに打ちのめされても必ず立ち上がった。

「綱手のバアちゃん……あの賭けの約束……その縁起の悪い首飾り絶対貰うからな」

「影分身の術!」

医療忍者の綱手には、もうナルトの体がもたないことが分かる。綱手はナルトに「かばうな」「もうやめろ」「逃げろ」と何度もいうがナルトは決して聞かない。

「そう意地張っていると、死ぬって言ってるだろ!!」

カブトはクナイを持ってナルトを殺そうと飛び込んだ。
だが、ナルトは臆することなくそれを真正面から左手で受け止めた。

手のひらが貫通し、血が地面に流れていく。痛みを我慢し、カブトの右手を掴んだ。

「俺は火影になるまでぜってェ死なねえからよ」


ナルトは影分身にチャクラを"圧縮、留め"させる。キーンと高音が鳴り、球体内のチャクラが回転し速度を上げていく。


「螺旋丸!!!」


(これは、本当に一週間で……!)


当たってもなお、地面を抉る勢いを持ち、カブトを数十メートル先の大岩まで吹き飛ばす。
カブトは自身の医療忍術でも回復しきれないダメージに倒れた。

そしてナルトも。

綱手がナルトに駆け寄り、心音を聞く。
螺旋丸でカブトを吹き飛ばす直前、カブトは九尾チャクラを体に還元する経絡系を断ち切ったのだった。
ナルトの脅威的な回復力は発揮されず、不整脈を起こし、生死を彷徨っている。

綱手はかつて愛した弟と恋人を重ねながら、ナルトに医療忍術を施した。


(死ぬな……死ぬな……死ぬな!!)


綱手の首からぶさがる鉱石に手が触れた。



「賭けには……勝ったぜ」


ナルトは息を吹き返し、絶望ばかりだった綱手に希望を見せた。
綱手はナルトの血だらけの左手を回復させ、涙を流す。

(最後にもう一度だけ……アンタに賭けてみたくなった)



***


大蛇丸はナルトの将来性を危険視し、ナルトを殺すために自来也との戦闘から外れた。

綱手はナルトを庇い、大蛇丸の向けた刀が綱手の胸を一突きにする。

「綱手……アンタだけは殺す気はなかったのに。その子に生きていられると後々厄介なことになるのよ。邪魔しないでくれる?」
「……この子だけ絶対守る」
「フン、何故そんな下忍のただのガキを命がけで守ろうとするの?」
「木ノ葉隠れの里を守るためだよ……」

大蛇丸は刀を引き抜き、伸ばした舌を口にしまう。
自来也はまだしも綱手がそんな事を言うとは予想外だった。

「木ノ葉を守るため?」
「何故ならこの小さなガキはいずれ火影になるガキだからね」
「フフ、何を馬鹿な世迷言を。それに……火影なんてクソよ。馬鹿以外にやりゃしないわ」

大蛇丸もかつて綱手がナルトに向けて言った台詞を口にした。あの時綱手には火の意思はなかった。
だがナルトの戦いを見て、綱手はもう一度夢を見つけた。もうトラウマだった血で震えはしない。

「……ここからは私も命をかける」

「何故なら私が、木ノ葉隠れ五代目火影だからね!」

綱手の額の白毫から紋様が伸びていく。

意識を戻した付き人のシズネは、綱手が行おうとしている術のリスクから制止の声を上げた。
だが、綱手の意志は固く、忍法・創造再生を使った。

致死の傷も急速に回復していった。


***


綱手、大蛇丸、自来也はそれぞれ口寄せの術を行った。
巨大なナメクジ、ヘビ、カエル。
九尾並みに大きなそれらを間近で見て、サキは最早手出しできるような戦いではなくなっていることを実感した。

すると上空から人間大のナメクジが落ちてきた。

「ひえ!?」
「安心してください。味方です。綱手様から貴方を治療するよう言われました」
「治療ってナメクジの貴方が?」
「移動します。少し体を借りますね」

カツユの分裂体はサキを包み込み、そのまま移動する。サキはひんやりとしたゼリー状の体内で軽い治療を受け、また光を見る時にはナルトとシズネの元に来ていた。

「無事だったのね、良かった」
「シズネさん、ナルトは?」
「綱手様が大方診て下さったから大丈夫」
「良かった……」

サキを回復してくれたカツユはナルトを運ぶカツユと結合し大きくなる。そしてカツユはサキ達に下がるように言った。

「サキさん、綱手様から伝言です。"遠くに行ったら結界を張ってナルトを守れ。アンタにしか出来ないことだ"と」
「……は、はい!」


後方に下がり、サキは綱手の言う通り結界を二重に張った。
伝説の三忍の戦いを目に焼き付けながら、サキは綱手の戦いぶりに胸を熱くさせていた。

「シズネさん」
「何?」
「綱手さん、五代目になってくださるって、夢じゃないですよね」
「ええ。ちゃんと仰っていたわ」


prev      next
目次



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -