闘いの後
=里外の森=
激闘の末、ナルトが暴走状態だった我愛羅を退けた。
二人ともチャクラが切れて地に伏せており、ナルトは我愛羅に這い寄って心中を語った。
自分だからこそ分かる我愛羅の負の感情に共感して、それでも仲間に手を出すなら許さないと。
そしてサスケがやってきてナルトにサクラの無事を伝えると、ナルトは安心しながら気を失った。
続けて我愛羅の元にもテマリ、カンクロウがやってきた。
「もういい。やめだ」
そう我愛羅が言うと、カンクロウは我愛羅に腕を貸し、木の上に飛んだ。作戦は中止。このまま砂隠れの里に戻ろうと。
「我愛羅!!」
サキは我愛羅達が目視で確認できるギリギリの位置で叫んでいた。
「アイツ、、」
「アイツ、我愛羅を助けたいってサスケと戦ってくれたんだぜ」
カンクロウの言葉と傷だらけのサキを見て、我愛羅の目が熱くなった。
遠くでサキが大きく手を振った。
「次は月見団子一緒に食べようね!!!」
「はは、何言ってんだ。アイツ」
「……」
満月の夜、我愛羅はサキの言葉を疑い、強引に遠ざけた。けれど、サキの言っていたことは本当だった。
仲良くなりたいという言葉に嘘はなかった事に我愛羅は気づく。
我愛羅は声が出ない代わりにカンクロウに掴まれている方と逆の手をそっと上げた。
サキは遠ざかる我愛羅たちをその場から見送って、再び意識を失った。
=木ノ葉の里 慰霊碑=
木ノ葉崩しが収束した後、昼にも関わらず分厚い雨雲が空を覆う日、今回の事件で亡くなった人たちの葬儀が行われた。
三代目火影 猿飛ヒルゼン__
『三代目!今度はユサとヒラと報告来ますね!!』
慰霊碑に置かれた写真を見て、サキは息を呑んだ。
もう二度と三代目に会えない。
まだ信じられず、手向けるはずの白い花から指が離れなかった。
「……」
後ろに並んでいたナルトが震えているサキの肩に手を置いた。
「サキ」
「……ごめん」
後ろを詰まらせてることを察して、サキは雑に花を手向けた。そして、気持ちが整理しきれないまま一人家に帰ったのだった。
=自宅=
サキは四年前のあの日から取っておいた駄菓子屋の光る紙を引き出しから出した。
もう湿気って使えないけれど、ナルトと里を抜け出し九尾の封印を解いたあの日を忘れないため、戒めるために保存していたものだ。
三代目への恩は計り知れない。
九尾のことを幾度となく相談したし、狐憑きの噂を揉み消してもらった。
サキの力を案じて、安全を考えて暗部の人間をつけてくれて、何年も得体の知れない自分のことを見守ってくれていた。
(こんなに優しい火影はもういないだろうな……)
(これからどうしよう)
火影の後ろ盾がない以上、より情報を守っていかなければいけない。
そもそも九尾を自由にする約束だって、次の火影が却下すれば振り出しに戻ってしまう。
サキは少し考えて地下演習場に向かった。
=地下演習場=
演習場でしばらく待っていると、ユサが現れた。
「あれ、ヒラは?」
「アイツは負傷者の治療に駆り出されてる。今日は訓練の日じゃないだろう。どうした」
「相談したかったの。今後のこと」
「ああ、その事についてヒラと話し合ったことを伝える」
「うん」
「三代目が殉職されたから、火影直属部隊、つまり俺とヒラのいる部隊の編成が変わる可能性がある。となると、十一班は自動的に解散になる」
「……マジか」
サキは頭を抱えた。途端に協力者がいなくなるなんて、何という苦境なんだ、と。
「もともと三代目のご厚意で組んでもらった班だからな。それに里全体の力が落ちてる以上、俺もヒラも本職に戻らざるを得ない」
「うん」
「そこで提案だ。カカシさんに全て話して味方してもらえ」
「…………マジか」
ユサ曰く、味方は多いに越したことはないが、持っている情報が大きいだけに人は選ばなくてはいけない、とのことだった。
そして選抜されたのがはたけカカシ。彼を選んだ理由は強さとナルトに近い位置にいる元暗部の上忍だからだ。けれどサキが一方的に苦手意識を持っているので、それを何とかしろとユサは言う。
「カカシさんはちゃんと話せば味方になってくれるはずだ」
「ハードルが高いよ!」
「……なら第二の案。暗部に入るかだ。暗部に入れば俺とヒラとまた同じ班になれるかもしれないが、今よりも自由度は減るぞ」
「それは、、困る」
「俺の話は以上だ」
二つの案を提示されたけれど選択肢は実質一つだった。
「……カカシさんに話すよ」
「ああ。次の火影様が就任して里が落ち着くまでの間だ。里が落ち着いたらまた三人で火影様に直談判しに行けばいい」
「ユサ変わったね。最初私のこと凄く危険視してて嫌ってたのに」
「怪しんだのは里のことを考えてのことだ。お前に里を破壊する意思がないと分かったから、相応の態度になっただけだ」
「ありがとう。自信がつくよ。ヒラにもまたねって伝えておいて。しばらくここには来ないよ」
「……分かった。じゃあな、サキ」
「うん」
=自宅=
葬儀から一日たち、里の天気はすっかり回復した。
サキはカカシに伝えなくてはいけないことを頭の中でずっと整理している。四年間ずっと隠してきただけあって、今更順序立てて説明することに気が引けてしまう。
(あんなに秘密だ何だ強く言っていたのが悔やまれる……)
昼頃、来客の予定はなかったのに玄関の扉が叩かれた。
誰だろうと扉を開くとナルトがいて、その後ろにカカシが立っていた。
「なんかカカシ先生がサキに用があるから家案内してくれってさー」
「あ、ナルトも一緒に話があるからね」
「ちょ、、ちょっと待ってください!ウチで!?」
「外よりここのがいいでしょ」
「……」
何もかも見透かしたような目に、昔カカシが言っていたことを思い出した。
『__口止めされてる方が気になるんだよな』
『話しません。火影様に口止めされてるので』
『言い換えれば、今の火影様が辞めた場合は話してくれるんだね』
カカシに打ち明けるには絶好のタイミングか、と観念して二人を家に上げた。
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