その日うちに哨戒圏を抜けて、私はコンゴウの元へと向かった。
「コンゴウ」
艦体の上に腰掛け、怠そうにしていた彼女は目線をちらりとこちらへ向けた。
「名前か。先程401にやられたようだな」
「すまない、コンゴウ」
彼女はメンタルモデルになっても感情が全く表に出なかった。彼女曰く、めんどくさい、だそうだ。
勿体無い。折角感情や感触を持たせて貰えたのに。どの艦だって、それが新鮮で素敵な事だと思っているのに。
きっとこういうコアの個体差がニンゲンで言うところの性格、に当たるんだろう。私やマヤ、ズイカクは楽しんでいるけれど……。
「で。何の用があって此処まで戻って来たんだ。」
コンゴウの声でふと現実に戻される。そうだ、そうだった。
「私、401に接触してみたいの」
対戦した時に、沢山不思議な事があった。どれだけ演算能力を使って攻撃しても、それを上回る思考で躱される。これが、ニンゲンを乗せた艦か、と。
タカオがまだ傘下だったとき、ちらりと話は聞いたことがある。驚くような思考を、ニンゲンを乗せることで可能にしている、と。
其れに興味があって仕方ない。私は兵器だ。
ーー強くなりたい。
只、其れだけだった。
「お前もタカオのように、向こうに行くのか」
コンゴウは、一瞬遠い目をした。そんなに昔の話じゃない。柳蓮二を載せた霧の艦は、タカオ、ヒュウガを傘下に蒼き艦隊を作り、そして今まで人類が成し遂げていなかったことを次々成し遂げた。
私たち霧にとって、彼は興味と恐怖の対象だった。実際、見切りをつけて何人も出奔している。
でも。
私は違う。
「いいえ。私は、コンゴウの元に」
コンゴウは私の話を受け入れてくれた。
← / →
back
|