自己紹介。 [ 5/7 ]
「ごめんね」
入江はその男の子に近づいてそっと言った。
「勝手な試合は本来ここでは禁止されているんだ」
にっこり。入江はお得意の作り笑顔を浮かべ、ここの仕組みを説明する。
「ボクは三番コートの入江。…よろしく。」
ちゃっかり自己紹介するあたりまで腹立たしい。
「五番。鬼」
オニさんはあっさりと自己紹介を済ませ、上へと登ろうと此方へやってきた。ふと入江と目が合い、入江は目を見開いたもののすぐにんまりと笑った。
「あれ?みょうじじゃないか。キミも居たなら挨拶すれば良かったのに」
入江がそう言って、ねえ、みんな、と言いかけた時だった。コートの中に知らぬ間に徳川も入ってきて居たらしい。
もしゃもしゃっとした頭の中学生に腕を掴まれている。……ものすごく不機嫌な顔だ。
「………あの中学生、大丈夫かな」
おもわずつぶやいた私に、オニは呆れたように言った。
「徳川の機嫌が悪りぃのは朝のお前のせいだろ。……中学生に声かけてこい」
げぇ。まだ朝のこと根に持ってたんだ。器の小さい男だ、あいつ。
「はいはい、…」
ひらひらとオニに手を振り、私はジャージを羽織り直した。