捨てコート  [ 4/7 ]


私はみんなより少し高めのところに居たから、それがボールだと早めに気づいた。

「『ボールを250個落とす。取れなかった46名は速やかに帰れ』……と。」

コートの中は騒然としていた。言葉の意味を理解して慌ててボールを取り合っている。

さすが監督………こんな事をする位、10番台のコートの選手はどうでも良いんだ。厳しすぎる気もするけど。

それからは悲惨だった。大多数の高校生がボールを取れず、終いには何人かが中学生に勝負を仕掛ける始末。
そしてその全員が見事に中学生に惨敗する、という結果だった。

「あーあー……アイツら、やっぱり愚かだねえ。」

いつの間にか後ろに立っていた入江がボソリと呟いた。入江は心底馬鹿だと思っている顔をしてて、私は思わず目を逸らしてしまう。
…こいつのこういうところ、凄く苦手だ。それ以外の所を見れば良い奴なんだけど。

「ね、そう思うでしょ、みょうじ。」

笑顔で同意を求めてくる入江の目は、そうだね、しか言わせない目だ。ああめんどくさ。

「そーですねー。」
某お昼の人気番組のようにやる気のない返事を返し、私は自らのメニューに戻ろうとした時だった。
オニが大声で叫んでいる。
あー……あそこまで言われちゃ、みんな帰るわな。すごすごと諦めて荷物を纏めて行く高校生を見て、上から眺めていた人達が揃ってコートに降りて行くもんだから、仕方なし私もコートに降りる事にした。

「ええーっ?!みんな帰ってもーた?!待ちぃや、やろーで兄ちゃんら!」

赤い髪の小さな男の子が大きな声で叫んだ。



  
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