捨てコート
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私はみんなより少し高めのところに居たから、それがボールだと早めに気づいた。
「『ボールを250個落とす。取れなかった46名は速やかに帰れ』……と。」
コートの中は騒然としていた。言葉の意味を理解して慌ててボールを取り合っている。
さすが監督………こんな事をする位、10番台のコートの選手はどうでも良いんだ。厳しすぎる気もするけど。
それからは悲惨だった。大多数の高校生がボールを取れず、終いには何人かが中学生に勝負を仕掛ける始末。
そしてその全員が見事に中学生に惨敗する、という結果だった。
「あーあー……アイツら、やっぱり愚かだねえ。」
いつの間にか後ろに立っていた入江がボソリと呟いた。入江は心底馬鹿だと思っている顔をしてて、私は思わず目を逸らしてしまう。
…こいつのこういうところ、凄く苦手だ。それ以外の所を見れば良い奴なんだけど。
「ね、そう思うでしょ、みょうじ。」
笑顔で同意を求めてくる入江の目は、そうだね、しか言わせない目だ。ああめんどくさ。
「そーですねー。」
某お昼の人気番組のようにやる気のない返事を返し、私は自らのメニューに戻ろうとした時だった。
オニが大声で叫んでいる。
あー……あそこまで言われちゃ、みんな帰るわな。すごすごと諦めて荷物を纏めて行く高校生を見て、上から眺めていた人達が揃ってコートに降りて行くもんだから、仕方なし私もコートに降りる事にした。
「ええーっ?!みんな帰ってもーた?!待ちぃや、やろーで兄ちゃんら!」
赤い髪の小さな男の子が大きな声で叫んだ。