ちかちゃんの気遣い [ 2/7 ]
「あら!なまえちゃんじゃない!」
自分の部屋に戻る道すがら、たまたま花壇の世話をしていた親彦先輩と出くわした。
「おはようございます、親彦先輩」
この人は髪型といい口調といい不思議な人だけど、気遣いとかそういう面では高校生の中でもピカイチだ。
「もうやだ!ちかちゃんって呼んでって言ったのに!」
じょうろをおいてぺしん、と私を叩いたあと、ちかひ、…ちかちゃんは不安そうな目をして私の髪を撫でた。
「…まだ慣れないわよね、此処。女の子一人だもの……相談くらいなら乗るわよ。」
ほら、こうして素敵な気遣いが出来るのはこの人しか居ない。
じわり、涙がこぼれそうになるのを耐えて、ありがとう、とだけ返した。
「みょうじちゃんは抱え込みそうだもの」
ドキっとする事を言うな、ホントに。
泣き言は言いたくない。此処に来た日からその決心は揺らいでいないし、弱音なんか吐かない。
まだ、泣くわけには行かないんだ。
「ありがとう、ちかちゃん。」