刺客到来
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「はあ?中学生が来る?此処に?」
大口を開けてかぶりついたトーストのくずが口の端からこぼれた。
「ああ。なんでも、50人もくるらしいぞ」
正面に座ったそいつはもくもくと納豆を混ぜる。
「ふうん、骨のある奴が来るとよかねえ」
ぱしゃり。至極真剣な顔をした徳川を惷は写メった。
もう一度トーストにかぶりつき、堪能する。
…随分と、ここの生活にも慣れたものだ。
「惷さん。なぜ今撮られたんですか」
「んー?今日のブログのネタたい」
ガタリ。徳川は立ち上がって惷のガラケーを奪い取った。
ああー、返してくんなっせ、カズヤ!
どうやったら消せるんだ…!
平穏ないつもの事だ。
私は通り過ぎ様に徳川からガラケーを奪い、画面をみて吹き出した。
さすがは惷だ。真面目な顔で納豆を混ぜる徳川がブレなくうつっている。これは傑作だ。
「おいみょうじ、何をしてるんだ早く消せ」
徳川はあっと言う間に惷に捕まり、手の中でばたばたと暴れている。
「やだ」
ついでに捕獲されている徳川も写メる。ぴろりーん。
それを手早く何人かに一斉送信した。
ほぼ同時に周りから着信音が聞こえる。
「昨日の仕返し」
食堂からでていく私の背中に、徳川の呻き声と入江の笑い声が聞こえた。