真田弦一郎の場合

落ち着かん。

ここ二日ほど、ある女子に心を乱されていた。毎朝風紀委員のチェックに捕まり、そのたび俺を見てげ、げんちゃーん、などと呼ぶのだ。恋仲でもないのにそのような呼び方、た、たるんどる…!

そう思う反面、喜んでいる自分も居る。認めたくはないが、彼女に呼ばれる度に頬が緩むのだ。蓮二や精市は気づいたらしく、からかってくる。
何故からかわれているのかは皆目検討がつかないが、これは、この感情はなんなのだろうか。気になって仕方がなかった。

む、むう……俺はたるんどる、たるんどる…!!!

「真田」

一人悶々としていると仁王が隣にやってきた。

「なんだ。今俺は考え事を…」「教えちゃろうか?」


「…なにを、だ」
「真田が悩んどる原因」

不本意だが、このままだとテニスに支障をきたす。

「…すまない。教えてくれ。」

仁王はいつにもなく真剣な顔をした。つられて俺も真剣な顔になる。

「こーいーしちゃったんじゃ、たぶん、きづいてなーいじゃろー?」

「………たっ」

「た?」

「たるんどるううううう!キェエエエ!!」  

そそそそうか、これが恋なるものか…

真田弦一郎の場合:たたたたるんどる!


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