柳蓮二の場合

…データにない。

その一言に尽きる。この数か月間俺の胸のあたりに渦巻くこの不可解な感情になんとも言えないまま、部室で呆けていた。

すべては、後期の生徒会で書記を務めることになっている彼女の教育係を任されることになってから始まったことだった。

彼女、とは。赤也の幼馴染であり、時々練習をも見に来て居る。

あくまでも赤也の応援であり、俺の応援ではないのだ。

…正直いい気はしない。だが何故?俺が何故嫉妬する必要がある。

むむむ、と頭を抱えていると、スッと背後に誰か寄ってきた気配がした。

「仁王である確率、きゅうじゅうよ…」

その瞬間。

仁王は俺の耳元で高らかに歌った。

「こーいーしちゃったんじゃ、たぶん、きづいてなーいじゃろー♪」



静寂の後、仁王はひきつる顔のまま言った。

「参謀…開眼は勘弁じゃ」





  柳蓮二の場合。



   相手を見つめる(基開眼)。






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