「よ、柳生くん」

真剣に本棚を物色する柳生くんの後ろからつんつん、と背中を突ついて声をかけた。そうすると面白いくらいびくっとして、持ってた本を落とすから思わず笑ってしまった。

「ごめんごめん、驚かすつもりはなかったの」

彼はすみません、本当に驚きましたと言うと本を拾いだす。私が拾った分も抱えて、どこかでお話しませんか、と彼は切り出した。

「いやはや、先ほどは失礼しました」

利用者の少ない図書室の一遍、日当たりのいい場所に本を積み上げて柳生くんはそう言った。確かにさっきのは彼らしくないと言えば彼らしくなかったけれど、まあ柳生くんだって人間だからななんて考えつつ、んやあ、気にしてないよーなんて生返事をする。

テニス部ではジャッカルくんと並んで話しやすい柳生くんは、口下手な私相手にもすらすらと話題をだしてくれる。それも、なんとなしに答えられる物ばかりで嬉しい。さすが紳士、ジェントルメン。

「ところで」

彼はカチリと眼鏡のフレームを押し上げ、私を見た。

「幸村くんのことなのですが」

…来たか。




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