「ごめんね、仁王。助かった」

スカートの下にはいていたジャージを脱ぎ捨てて、仁王を振り返る。

「おん」

二人でひらひらと手を振り合って、帰路について。

駅のホームにたどり着いたときだ。

バイブにしていた携帯が震えた。またかよ、しつこいな幸村。

そう思ってメールを開けると。

『なあ、俺もこうやってメールしたら無視するん?』

.....仁王だった。

あいつ、きっとこれ返信しなかったらあの尻尾みたいなやつをさげて悲しそうな顔をするに違いない。

『馬鹿。しつこくなかったら私だってちゃんと返信するからね』

それだけ打って、私は電車に乗り込んだ。

電車に乗っている時間は実質10分もない。沿岸沿い、七里の浜を見ながら過ぎるこの秋の始めの時間。

…あいつを一人にしちゃいけない。

幸村の手術が決まったのは、それから三日後だった。




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