ぴりりり。 私の携帯が着信を知らせる。もう相手は見なくても分かってる。 幸村の病室を訪れてから三日。 あいつは嫌がらせとばかりに一日に何通もどうでもいいようなメールを送りつけてくる。何通も。 『今日は看護婦さんがトクベツにケーキをくれたよ。俺ってばモテモテだなあ。』 とか。 『ねえ、暇。今どうせ授業中なんでしょ。相手してよ。』 とか。 『みて。俺、今日珍しく顔色が良いんだよ。写メ添付したから、保存しといてね。』 とか。 何?病人ってそんなに暇だったっけ? はじめの一日はそりゃあまじめに返してましたよ。一通一通。でもまあ二日目でなんか可笑しいって気づいて… 最近は夜まで携帯の電源切りっぱなしだもん。 あんなに弱ってた人だとは思えない。 まあでも、それは。 少しは私が役に立って。 幸村が元気になったっていう証拠なのかな、って。 それなら、晩くらいは付き合ってやってもいいか、なんて。 『ねえねえ、みょうじ。俺さあ、次のお見舞いのときは堂島ロールが食べたいなあ。』 ごめんなさい、前言撤回。 こいつやっぱりめんどくさい! [prev|next] top |