小さく震えるその手は、とても王者達を全国大会に導いた手には思えないほどこけていた。 「....怖いんだ。本当にテニスが出来なくなるんだなあ、と思ってさ...。」 その声は今までになく弱々しくって。幸村に握られた手は震えて。 「....怖いけど、信じるしかないじゃない。お医者だってきっと全力を尽くしてくれてるよ。...もしそうじゃなかったら全力で私が怒るから、さ....」 あ、あれ、何か恥ずかしい、 「みんな、居るしさ.....。一人で抱え込まないで、よ。」 幸村は握った手をゆっくりと持ち上げ、そのまま自分の頬に摺り寄せた。 指先にカッと血が昇る。 「え、幸村、なにし、」 ゆっくりと目線を合わせた幸村は、いつものようににやりと笑みを浮かべた。 「そうだね。」 すりすり。頬に指先を擦り合わせ、幸せそうに微笑み。 幸村は、この病室に入ってきてやっと前みたいに笑った。 「これからも遊びに来なよ。君と話せなくてすっごく退屈だったんだ。」 「拒否権は」 「ないよ」 あいかわらずの王様政権、でもそれが幸村らしい。 「あ。あと、俺が居ない間、花壇よろしくね。」 「...ウッス。」 やっと、やっと私の知ってる幸村になったかな。 [prev|next] top |