「っ、ぶちょっ!」

切原くんが泣き出す。幸村くんも目に溜めていた涙を流す。

「ごめん、みんな、本当にごめん……!」

幸村くんはひたすら謝り続ける。こんな幸村くん、初めて見た。

「っ、精市、泣くな、……頼むから、」

真田くんは幸村くんに泣くなと言いつつ自分がボロボロと泣き始める。

柳くんも一筋、涙を伝わせながら切原くんの背中をさする。

……負けた。私はテニスをしている幸村くんを初めて見たけれど、彼なら負けないとどこかで安心していたかもしれない。

みんなが涙を流している時、ふと幸村くんはこちらに来た。

「格好悪いとこ、見せちゃったな」

そういって幸村くんはくしゃりと顔を歪めた。

「そ、んなことないよ、幸村くん、かっこよかっ、」

言い掛けたとき。幸村くんは私に寄り掛かってきた。

彼の肩は小さく揺れている。肩の部分に水分が広がった。

私は開いていた口を閉じ、幸村くんの背中を撫でた。


こうして彼らの中学テニスは、幕を閉じたのである。





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