五感を奪う。それは常人にはなし得ないことだけれど、確かにコートに立つ幸村くんはいつもより大きく見える。あの優しい微笑みは仕舞い、どこか、…寂しげだ。

幸村くんの打球を返せなくなったおちびちゃんに、立海の応援軍の声が木霊する。

常勝立海大!レッツゴーレッツゴー立海大!


…なんだか、非情だ。

私の隣にいた柳生くんがぼそりと言う。

「気の毒ですが、これが勝負と言うもの」

その時、相手校側から声が上がった。声援にかき消され、こちらまでは届かない。

それでも、おちびちゃんには何かしら伝わったのか、…彼の体は光出す。

「っえ、ちょ、なんで?」

有り得ない。何で光って、えっ、

「天衣無縫の極み……ついに越前はたどり着いたのか、」

柳くんの声には若干の焦りが読みとられる。普段彼は冷静沈着だから、かなりまずいんじゃ、

あっけなかった。天衣無縫の極み、とやらに到達した彼はあっと言う間に幸村くんを倒してしまった。

「……負けちゃった、」

幸村くんはベンチに戻ってきて、そう私たちに告げた。





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